Hygge(ヒュッゲ)
2012年から毎年リリースされている国連の世界幸福度報告書による2016年版「世界で最も幸せな国ランキング」(http://worldhappiness.report/)。日本は51位と先進国としては低く、1位ノルウェー、2位デンマークなど北欧4カ国が上位を占めている。北欧はそんなに幸せ感溢れる国なのだろうか?
調査対象は158ヵ国で、国民1人当りの実質GDP(国内総生産)、社会保障、健康寿命など数値化できるものは実際の数値的評価で加点し、人生選択の自由度、寛容度、汚職度、政治的自由度などはアンケート形式の質問の答えをそのまま集計して加点している。従って実際は汚職が酷くても、国民がそれを許して満足していれば得点は高くなるのだそうだ。南米の順位が高いのはそのせいか?
日本は寛容度(generosity)や弾圧からの自由度(dystopia + residual)で被害者意識が強く、相対的な状況は良いはずなのに損をしている。政治的弾圧からの自由度がアンケートでは最も得点配分が大きく、日本は政治的には他国に比べ自由なのに国民の閉塞感が高いようだ。結果、北欧やスイス、ニュージーランド、カナダ、オーストラリアなど白人が理想とする国が上位を独占していると言える。
国連の幸福度調査は、ブータンからの国民総幸福量(GNH)という概念の提唱を受けて実施されたものだが、ブータンは皮肉にも97位である。国民皆が幸せを感じているが、何しろGDP(国内総生産)が低すぎるのだ。奇しくも国連の調査が白人社会を基準にしていることを示している。
デンマークには「Hygge(ヒュッゲ)」という言葉がある。これは「居心地がいい時間や空間」を指すデンマーク特有の幸福に対する概念で、何百年以上にわたって培われてきた独特の感性だという。ランキングが32位と日本より高かったタイにも、「サバイサバイ」という「気持ちがいい~」時に使う言葉がある。
実は日本ほど、戦後多かった物乞いを完璧に無くした国は無い。北海油田による不労所得に恵まれた北欧諸国でも、幸福を感じることに長けているタイでも、意外に物乞いをする路上生活者は多いのだ。資源による不労所得が極端に少なく、付加価値労働だけで人口1億人以上を養い、落ちこぼれが少ない国日本。頑張って働いている世界でも稀な国のひとつであるにも関わらず51位というのは、自分の幸福度を自分で決めることが苦手な国民だとも言える。
これからの日本が目指すのは、経済成長を追いかける数値的豊かさ?ではなく、幸福を感じる敏感なセンサーを磨くことなのだろう。
| 17.06.16