みちびき
スマートフォンやカーナビなどで利用され、現代日本社会を支えるインフラのひとつになっている位置情報システムGPS。その性能を飛躍的に高める日本の準天頂衛星システム2号機「みちびき2」(http://qzss.go.jp/)が打ち上げに成功した。日本版GPS 構築に向けた一歩であると政府は言う。しかし、大本のGPS自体が米軍によって運用されそれに依存している限り、米軍のシステムの補完でしかないのではないだろうか。
米国が1970年代にミサイルなどを誘導するため軍事用に開発したGPSは、現在31基で運用され地球全域をカバーする。日本のGPSは全てこれらの衛星を利用している。しかしこの米国中心の衛星には日本付近が手薄になる時間帯があり、最大で10メートル程度の誤差が出る。「みちびき」はこれを補完する衛星で、独自に全地球をカバーするのではなく、米国のGPSシステムを利用して日本列島付近の空白を埋め、精度を上げることを目的にしており、その結果誤差はわずか数センチ程度にまで大幅に縮小されるようだ。
政府は「みちびきGPSシステム」を速やかにスタートさせるため、年内に測位衛星と静止衛星を打ち上げ、来春には7年前に打ち上げた1号機を含め4基で本格運用をスタートさせることを予定している。さらに2023年には日本エリアに関して米国のGPS衛星に依存せず、直接高精度の測位が常時可能になる7基体制での運用開始を目指しているそうだ。
位置情報は、生活や産業を支える重要なインフラであると同時に、国家の安全保障にも深く関わる。それ故、日本も米国への一極依存から脱却を図るのは当然のことなのだが、「みちびきGPSシステム」を見る限り米国依存がますます進行しているように見える。
片や、中国版GPS「北斗」はこれまでに20機打ち上げられ、2020年までに35機体制になるという。ロシアは「GLONASS」を24機体制で運用。ヨーロッパは米国から独立して18機打ち上げた「Galileo」を2020年までに30機体制にする。さらにインドも「NAVIC」で昨年既に世界対応衛星位置情報システムの運用を始めている。
中でも中国は、東南アジア各国に中国版GPS衛星を利用するための技術的支援を行っており、ASEANのある国が中国版GPSを活用したインフラ整備をひとたび始めれば、いっきにアジア市場が中国版「北斗」で占められることになる。
衛星位置情報システムを見るとその国の自立国家への覚悟をいとも簡単に知ることができる。日本は「自立国家」たる為に、「みちびき」が各国システムに対して全方位で補完できる体制を取るべきではないだろうか。
| 17.06.09