石油終焉
中東の石油大国サウジアラビアの国王の46年ぶりのアジア歴訪の一環で、サルマン国王がマレーシア、インドネシアに続いて、1500人を超える随行者を連れて12日に来日し話題をさらっている。日本が原油の3分の1を依存するサウジアラビアは、このところの原油価格の低迷で3年連続の財政赤字に陥り、将来への危機感から「脱石油立国」を柱とする経済改革を進めようと、危機感を持って今回の歴訪を決定したようだ。
国王は改革の実現に向けて日本企業の投資や技術協力などを求め、日本は規制の多かったサウジ進出に、インフラや医療、再生可能エネルギーなど幅広い分野で商機拡大を狙うことになる。訪問団を受け入れる日本は特需を期待して浮き足立っているようだが、そんなに単純ではないだろう。
国王来日騒ぎの陰で注目すべきは、ムハンマド副皇太子と外相、エネルギー産業鉱物資源相、商業投資相と国営石油会社アラムコのCEOら重要閣僚は来日せず、同時期に訪米してトランプ政権と会談している事だ。(http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/03/post-7174.php)
一方トランプ大統領と政権の中枢は、選挙期間中からロシア政府高官と接触し、スキャンダルまで起こして何をしたかったのだろうか?
米国は、1911年のロックフェラー家によるスタンダードオイルの設立以来、国際石油資本の中枢を握り石油の富を独占して来た。ロックフェラー家が米国のキングメーカーとして戦後の大統領選出に深い繋がりを持って来たことは周知の事実だ。
そうした既存米国政治の基盤を持たないトランプ政権が、石油民族資本の台頭と米国石油資本の弱体化、エネルギー消費の変化を読み解いて、タイミング良く既存政治家に有利なこれまでのレジームを破壊し、独自の資源権益ルートを作り出そうとしても不思議はない。
実現の為には、世界の石油の最大購入国である中国と日本の協力が是非とも必要な訳だ。この2カ国が、購入先を中東の石油からシベリアの天然ガスへと比重を変えた時、世界に何が起こるのだろうか?
中東の既存の石油輸出大国は驚くべきスピードで凋落し、替わってシベリアの大発展が起こり、トランプ政権の経済的安定を約束するのではないだろうか?
これこそがトランプ大統領の目指す新レジームであり、日米露に中国を加えた、シベリア極東資源開発を軸とする新しい経済発展のシナリオである。これを最も恐れるのは中東産油国、その代表サウジアラビアだ。
「アラビアのロレンス」の中でロレンスが「砂漠の砂はしっかり握っていないと指の間から落ちてバラバラになる」と語る。
今まさに石油の時代が終わろうとしている。
| 17.03.17