オーサグラフ
2016年度グッドデザイン大賞に建築家・鳴川肇氏らによる「オーサグラフ世界地図」(http://www.authagraph.com/)が選ばれた。
選考の理由として、「今までは世界地図図法の一つであるメルカトル図法にとらわれていた。オーサグラフにより新しい世界地理のとらえ方ができるようになる」、「世界地図は価値観の根底を作るもの。これまでのメルカトル地図は、16世紀の大航海時代に作られたもので、北極・南極に近づくほど面積が巨大になり、世界を把握するのに大きな誤解を与えてきた。世界を正確に捉えられる新しい地図を作るという発想そのものがデザインだと思った」などが挙げられている。
「オーサグラフ世界地図」は地球の表面積を96等分し、それらの面積比を保ちながら正四面体に変換して、陸地の面積比と形状をほぼ正確に表記している。authalic(面積が等しい)graph(図)という名の通り画期的なものだ。
これまで学校の教科書やGoogleマップで採用されてきた見慣れた地図の多くは、メルカトル図法によって描かれたものだ。緯線をすべて赤道と同じ長さにしているので、どうしても「ゆがみ」が生じて極地に近づくほど事実との違いが増大する。たとえばグリーンランドという島は確かに大きいが実際の17倍の大きさに描かれているし、日本は実はそんなに小さくなく、ロシアはそこまで大きくない。言われてみれば当たり前に思うことだが、これまですっかり騙されてしまっていたのだ。
地理は社会の経済的、政治的展開に劇的なインパクトをもたらす。特に国土の大小は地政学の重要要因で、国土が小さいと国際社会で大きな影響力を持てないと考えられることが多い。極東の小さな島国と思われている日本が、海域まで入れればなんと世界6位の大きさであり、かつ中国に越されたとは言えGDP世界第3位の大国であることを、日本人はもっと自覚すべきだろう。
米国、中国、ロシアの三超大国に世界で唯一隣接しているとも言える日本は米国の属国ではなく、大国としての責任を果たす時機が到来している。頭の中で16世紀に作られた歪んだ地図がベースになっているのでは、外交にすら影響を与えかねない。ロシアはそんなに大きな国ではない。
12月7日は75年間真珠湾攻撃の日として米国民に記憶されて来たが、来年からは12月6日にソフトバンクの孫社長がトランプ次期大統領に対等なビジネスを申し入れた日の翌日として記憶されることになるのでは?500億ドル投資の結果が楽しみだ。
| 16.12.09