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モデルX
「モデルX」と言う命名は、時代を先取りし世の中を変えようとする時にするものだ。
テスラモーターズ(https://www.tesla.com/modelx?redirect=no)は、3車種目となる「モデルX」を9月12日に日本でも公開し、同日オンラインでも予約を開始した。
「モデルX」はXと言う命名通り、同社初のSUVモデルであるだけでなく、性能的にもデザイン的にも価格的にも先進性を持った意欲作だ。
パッケージングは、モデルSと同じシャシーを採用することで低重心化に成功しており、大型SUVとして7名の乗車定員に加え豊富な収納スペースも確保している。
性能はAWD方式で470馬力と、低速トルク特性を生かしたスタートダッシュはスーパーカー並みでカイエンターボをも凌駕する。しかもフルチャージ時の巡行距離は500kmを超えてEV中最大値である。
デザイン的にはとにかくスマートで大きさを感じさせないにも拘らず、跳ね上げ式のファルコンウイングドアで異様な存在感がある。ラジエーターを大型化して暴力的存在感を出してきたドイツのSUV勢に対し、ラジエーターの無いテスラは異種生物の様な顔つきを創り出しアイコン化している。
価格的にはドイツ勢より安く設定されていて、これも面白い。輸入車SUVがポルシェ勢に席巻されている中、カリスマ性でも一矢を報いる存在になるだろう。また普通のものより10倍以上細かいメッシュのエアフィルターを装着し、アレルギー物質やバクテリアを完全に取り除いている。排ガスが無いだけでなく室内にも病院の無菌室なみの空気を供給していて、これはPM2.5に悩むアジアのユーザーの心を鷲掴みにするだろう。
テスラを創業したイーロン・マスクは、エコカー=スロー・カーと思われていた時代にスポーティーなEVを登場させ、IOTをコンセプトに徹底的にインターネット時代を意識したプレミアムセグメントのEVというカテゴリーを生み出した。日本のハイブリッドカーの様に、燃費が良くてクリーンだから去勢されて遅くてもいいとは考えていない。EVだからこそ出来ることを徹底追及している。
1989年にホンダは、オールアルミモノコックの「NSX」を正に「モデルX」として衝撃的に発表し、フェラーリやポルシェを震え上がらせた。
しかし先月発売された2代目「NSX」は、アメリカホンダの販売戦略に乗った米国製「NSX」でしかなく、日本のファンをがっかりさせる出来だった。サラリーマンが自らの技術力を過信し、周りをみない開発に未来はない。F1でホンダが勝てなくなったのも同じ理由からだろう。
| 16.09.30
重国籍
民進党代表に選出された(村田)蓮舫氏が父親から受け継いだ台湾の「国籍」も所有する二重国籍の可能性があると問題視されたことは、日本人の国籍観が、欧米諸国、アジア諸国、特に華僑やユダヤ系ビジネスマンがリードする世界と比べ、如何にあやふやかの象徴だろう。
そもそも台湾を国として認めていないという点はさて置き、日本の国籍法(http://www.moj.go.jp/MINJI/kokusekiho.html)では二重国籍を認めていない。二重国籍になった場合は、一定期間内にどちらかの国籍を選択しなければならない。自ら志望して外国籍を取得した場合は日本国籍を喪失すると決められている。がしかし、二重国籍は罰則が曖昧なため年々増加の一途をたどり、推定で40万~50万人いると言われている。
2014年に青色LED開発などでノーベル物理学賞を受賞した中村修二氏は、ノーベル賞のプロフィールに"American Citizen" (アメリカ人) と紹介され、「中村氏はアメリカ人なのか、日本人なのか」と話題になったことがあった。中村氏は「研究の予算を得る必要などから米国籍を取得したが日本国籍を捨てたわけではない」と説明し、自身はまだ日本国籍を持っているという認識だった。安倍首相(政府)も国籍法を知りながら、中村氏を日本人として22人目のノーベル賞受賞者と認める(認めたい)発言をしていた。ところが、在アメリカ合衆国日本国大使館のサイトでは「自己の志望(帰化申請)により米国市民権を取得した者は、米国市民権を取得した時点で日本国籍を喪失したことになる」と、つまり中村氏は日本国籍を保持していないと説明している。
(村田)蓮舫氏の場合はその逆で、日本国籍取得後台湾での手続きが滞っていた為の二重国籍状態だったと予想される。生地主義を取る国での出産や、国際結婚の増加で、喪失届も国籍の選択も自らの届け出でなされる限り、多重国籍者の数は今後も増加すると考えられる。日本の国籍唯一の原則は揺らいでいる。
「国籍唯一の原則」は、1930年のヨーロッパ国籍条約に倣ったものとされている。しかし、ヨーロッパでは1997年に「自国民が婚姻により当然に外国籍を取得した」場合は、「権利として当然に多重国籍を容認」するとのヨーロッパ国籍条約が採択された。日本の「国籍唯一の原則」は風前の灯なのだ。
罰則は無いものの、国のリーダーになろうとする政治家は特に気をつけなければならない。アメリカですら大統領になる為にはアメリカ国籍だけでは不十分で、アメリカ生まれ、もしくは両親がアメリカ人であることを法律で求めているのだ。
| 16.09.23
しょっパフェ
パフェといえば、シリアルやクリーム、フルーツなどが彩り良く盛り付けられたフルーツパフェなど、目の前に出てきた瞬間に心踊ってしまうスイーツを思い浮かべることだろう。
食べるわくわく感が器と盛り付けによってこうも違うのかと思ってしまうパフェのこの特別感を、酒の肴でやってみたいと言う人がいても不思議ではない。好みのツマミを透明なグラスに盛り付ける「しょっパフェ」が今話題になっている。
Instagramを見ると、緑、オレンジ、紫……と彩りも自由自在で華やかな「しょっパフェ」の画像が多く、「デイリーポータルZ」(http://portal.nifty.com/kiji/160817197203_1.htm)でも取り上げられ、いろんな人が「しょっパフェ」にトライして投稿していることが分かる。昆布、大葉、イクラ、山芋とろろ、鮪、サーモン、卵焼き、豆腐、葱を重ねて高さを出すように盛りつけることでよりパフェ感をアップさせたり、とろろ納豆にカニカマをトッピングして混ぜて食べる事でねばねば丼のような味わいになるようにしたり、冷やし中華の麺を下に入れ具材を重ねしっかりと味を染み込ませたり、と工夫もいろいろだ。
器にも凝る人が多く、ビーカーやフラスコを製造しているインドの大手理化学ガラスメーカーBOROSIL社が製造する耐熱ガラス「VISION GLASS」(http://www.borosil.com/products/vision-glasses/)が「しょっパフェ」愛好家に人気だ。直火もOKで、実験器具ならではのタフさとシンプルなプロポーションから、国を超えて料理のプレゼンテーションを意識するプロやインテリア好きの男性から注目されている。
最近Instagramなどで重ねて断面の美しさを楽しむことが流行っている事が「しょっパフェ」ブームに拍車をかけているようだ。昨年NYを起点に日本でも流行ったジャーサラダのブームも然り、サンドイッチの断面の美しさなどもSNSを賑わしている。味もさることながら「SNSで見栄えが良い」というのが「しょっパフェ」の旨みだ。
それにしてもネットメディアSNSが持つ"共感力"は、世界人口の半分にも達する人が持つスマートフォンという平等な端末を得て、活字メディアが想像すらできなかったダイレクトな媒体力を持ち始めている。
数年内にSNSユーザーが7億を超す中国をはじめ思いもかけなかった国々で驚くべき事が起こるだろう。
| 16.09.16
ガラホ
昨年あたりから携帯各社は、ガラケーならぬ「ガラホ」の販売を開始している。
「ガラホ」とは何か?ガラケーとスマホを合わせた造語で、ガラケーの操作感そのままにスマートフォンと同じ「アンドロイド」で動く携帯だ。多機能すぎてスマホを使いこなせない、片手で操作できるシンプルなガラケーが好きという人向けらしいが、実際には「LINE」が利用できるガラケーとして注目されているようだ。
総務省が発行した「平成28年版 情報通信白書」によると、直近3年間のスマホ普及率は増加傾向にあるものの、平成27年末で53.1%と先進国では低い。アウンコンサルティング(株)(https://www.globalmarketingchannel.com/press/pdf/0318.pdf)の調査によると、国別ではシンガポール88%、韓国・スウェーデン83%、オーストラリア77%、中国74%、英国71%、ドイツ65%、フランス・イタリア62%、ロシア61%、米国58%、トルコ56%、日本53%と続く。日本より低いのは、ナイジェリア51%、インドネシア43%、フィリピン41%、タイ40%、インド33%など、人口が多く貧富の差が極端に大きい国だけだ。日本はガラケー王国であったことから、先進国でありながらスマホ普及率が低いのが特徴だ。
また、国別のSNS利用率(「平成28年版 情報通信白書」)でも、中国94.8%、韓国90.9%、米国81.9%、英国78.1%、ドイツ74%など、日本の60.9%は先進国の中で相対的に低い。各国とも一般的には「Facebook」の利用が目立つのに対し、中国は高齢者も含め「微博(Weibo)」と「微信(WeChat)」の利用率が高く、日本は「LINE」の利用に偏っている。また高齢者(60代)のソーシャルメディア無視が目立つことも特徴で、ここにも日本社会の特異性が現れていて面白い。
日本の携帯業界は、過去ガラケーで海外進出の失敗を繰り返したが、内需がそこそこ大きく新機種を生み出す技術力があったことから、世界標準から取り残されながらも生き延びてきたのだ。
欧米系先進国は基本的にiOSとAndroidのスマホベースでSNSが発達し、その影響力は技術力のない後進国エリアを巻き込んできた。一方、中国のグレートファイヤーウォールと日本のガラホは独自の考え方で異彩を放っている。しかし、そんなスマホビジネスの世界で、日本人1億2500万人の内需だけではどうにも戦えないことはハッキリしている。
ここ数年のうちにスマホとSNSの市場で独自の世界戦略を持ち得なければ、日本企業は単なる部品供給担当に成り下がるであろう。
| 16.09.09
Ninja(忍者)
世界に通用するジャパンコンテンツとして、「Ninja(忍者)」に再び注目が集まっている。
映画やアニメなどの影響で、世界中で関心は高い。グーグルが行った調査によると、「NINJA」というキーワード検索は世界的に年々増加、国別に見ると1位がアメリカで2位がインドネシア、その両国が圧倒的多数を占め、そのあとにタイや台湾、南米のコロンビアなどが続くそうだ。
実在した忍者はいまだに謎に満ちているが、その謎を科学的な視点から明らかにする画期的な企画展「The NINJA―忍者ってナンジャ!?」が、東京・お台場の日本科学未来館で7月2日から開催されている。貴重な歴史資料や忍者道具を展示するとともに、三重大学などで近年始まった学術研究の成果を踏まえて、手裏剣打ちや跳躍力を鍛える修行体験、任務をこなすための記憶術や伝達術、最も大事な呼吸法などが紹介され、その歴史的意味にせまっている。
NHKのBSプレミアムでは「いま忍者 初見良昭八十四歳」が放送された。900年の歴史を持つと言われている戸隠流忍法第34代宗家 初見良昭(http://www.togakure.sakura.ne.jp/index.html)は現在84歳、世界中で忍術を指導してきた。弟子の8割が外国人で国内外に20万人近くいると言われ、有名アクション俳優も指導を受けに訪れるし、弟子の中にはFBIエージェントや軍人もいるらしい。ちなみに初見がたどり着いたのは「力に頼らない忍術の境地」なのだそうだ。
忍者は「心・技・体」の総合的な力を兼ね備えた存在であり、忍術は自然や社会に対する実践的な知識の蓄積だ。地道なトレーニングを積み重ね、自然や周りの環境に応じて創意工夫しながら活動し、モットーは何が何でも「生き抜く」。まさにアスリートの心境であり、ビジネスの現場にも応用できる、現代人に通じる「心得」だ。忍者のポーズとも言われ、ラグビー日本代表、五郎丸選手の「ルーティン」がブームとなったが、彼のように「印」を結ぶと、10分程度は集中力が向上し体の力みがとれて落ち着いた状態になることが解明されている。
神秘的で超人的にカッコいい「Ninja(忍者)」は、日本の観光戦略のコンテンツとしてますます期待が高まっていく反面、意外と日本人自身は忍者の仕事とは、実は争いを避けるための情報収集であり、平常心と集中力を養うためのものという事を知らない。
2020年の東京オリンピックは、是非この「Ninja」魂で、外国人を驚かしてもらいたいものだ。
| 16.09.02