トランスフォーマー建築
8月5日、南米初のオリンピックがリオ・デ・ジャネイロで始まった。
大統領の失権と財政難や治安の悪さ、果てはジカ熱の発生で開催が危惧されていたが、何とか実施にこぎつけたようだ。開会式に招かれていた日本を代表する某建築家は第一声で、「ブラジル人にもしっかりしている人はいる」とポジティブなコメントを発し、ブラジルのオリンピック開催に漠然と漂っていたミッション・インポッシブルな雰囲気を一気に吹き飛ばした。
リオ五輪にも色々評価出来るところはある。新たに建設された中小規模のスタジアムは、モジュール化されたプレハブ工法によってつくられた「再生可能な建造物」(https://www.olympic.org/news/nomadic-venues-will-be-transformed-into-rio-2016-legacy)らしい。規格化された鉄骨の柱や梁、鋼板、コンクリート床といった共通の部品と座席、そして競技自体に必要な床やプールといったものがパズルのような組み合わせで作られている。オリンピックが閉幕したら、それらは解体、搬出され、新たな用途の建物の一部として再び組み立てられる。まさに変形ロボット “トランスフォーマー” 的な建物なのだ。
例えば、ハンドボール競技場はジャカレパグア地区の500人規模の4つの小学校になり、ほかの競技場も、アスリートのトレーニングセンターや市民のレクレーション施設、国際会議場、展示ホール、イベント開催施設に利用する計画だそうだ。近年、主催者と開催都市に対し、聖火が消えて観客や選手が自国に帰ったあとの「五輪の遺産」(レガシー)についても考慮するよう指示している国際オリンピック委員会は、今回の計画を高く評価しているという。
リオ・デ・ジャネイロのパエス市長は、これを「遊牧民のような建築」と呼び、「リオ五輪はこれからのオリンピック開催都市の“手本”になる」と話している。
とはいうもののブラジルは現実、この数年で急速に深刻化した財政問題を抱え、政治も不穏な空気が続いている。せっかくのレガシー計画も、遅れで頓挫して解体された機材もそのまま放置されかねない状況だそうだ。次回開催国の日本から何かブラジルにできることはないのだろうか?
例えば、解体されたそれらのモジュール部品を日本のオリンピック委員会が輸入して、2020年の会場建設に利用したら面白い国際協力になるかもしれない。ブラジルの財政危機の緩和に、東京オリンピックが手を差し伸べられれば素晴らしいことではないだろうか。
小池新東京都知事の点数もぐっと上がるだろう!
| 16.08.12