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世界同時高齢化

2015年の日本人の平均寿命は女性87.05歳、男性80.79歳で、ともに過去の記録を更新したそうだ。主な国・地域と比べると、日本の女性は香港に抜かれ長寿世界1位から2位へ、男性は香港の81.24歳、アイスランドとスイスの81歳に次いで3位だった。厚生労働省の発表はいつも日本が一番でいたかったというトーンだが、世界中が同時高齢化していると考えるのが正しいだろう。                
内閣府の「平成27年版高齢社会白書」によると、日本の高齢者比率(65歳以上の人口の総人口に対する割合)は2014年10月1日時点で26.0%(前年25.1%)だ。世界的には、2010年の世界総人口69億人に対する高齢者比率は7.7%、これが2060年に見込まれる総人口100億人に対し17.6%にまで上昇すると推測されている。今世紀、世界同時高齢化が急速に進展することは確実のようだ。
WHOの2015年の統計によると、日本の男女平均83.7歳に対し、31位のアメリカは79.3歳、53位の中国でも76.1歳、102位のバングラディッシュでさえ全世界平均とほぼ同じ71.8歳だ。香港や日本だけが特殊なのではない。
そんな中、日本では高齢者向けビジネスが多彩に展開されている。高齢者向け紙おむつをはじめエイジングケア化粧品やサプリメント、高齢者向けファッション、スポーツ用品など、日本のきめ細かい高齢者向け商品群は多様かつ品質的優位性があり、そのまま世界市場でビジネスチャンスをつかみそうだ。
例えば2014年に設立された(株)ワイズ(http://ys-j.co.jp/)は患者の個別ニーズに合わせたリハビリプログラムを提供しているが、保険を使わないため高額だ。が、コストをぎりぎりまで削った料金設定が評価され、日本人だけでなく早くも中国からの患者も訪れているという。更には、医療・介護用、重労働用の装着型ロボットスーツを開発しているサイバーダイン(株)をはじめ、高齢者市場向けベンチャーが続々誕生している。
人口減少、少子高齢化で日本のみならず世界の成長力が低下する、といった厳しい見通しが目立つ一方で、これは大きなビジネスチャンスなのだ。
年金だけを見て、老人を支える若者の負担が大きくなっていると考えるのではなく、増え続ける健康な老人がより長い年月働いた分、数の少ない若者が楽できる社会を創り出そうと考えるべきだろう。

| 16.08.26

Smombie(スモンビ)増殖

スマホとゾンビを掛け合わせた造語「Smombie」(http://www.jugendwort.de/)がドイツで流行している。
スマホの画面を見ながら集団でのろのろとゾンビのように歩くスマホ中毒者を指しているらしい。ドイツ南部のアウクスブルク市は、危険な「Smombie」対策として「路面信号機(traffic lights in the pavement)」まで設置したことで注目を集めている。路面電車との衝突事故を防ぐ為に、電車の接近を知らせる信号機を視界に入りやすい地面に取り付けたのだ。
米ニュージャージー州では「Smombie」を狙い撃ちにする「注意散漫歩行法案」が提出され、違反者には50ドルの罰金か15日の懲役が科せられるそうだ。全米安全評議会によると、「歩きスマホ」が原因の事故は、この10年余りで累計11,100件に達しているという。世界中で「歩きスマホ」絡みの事故やトラブルが急増し、当局が対策に苦慮しているのだ。
中国当局もやる事が早い。重慶市の目貫通りに、「スマホ禁止レーン」とともに「歩きスマホ専用レーン」を設けてしまった。韓国のソウルでは、手の中のスマートフォンに気を奪われたまま道をさ迷う「Smombie」が事故にあわないよう警告する標識が登場。 日本でも昨年11月にJR東日本が携帯電話大手3社と組んで「やめましょう、歩きスマホ」というキャンペーンを展開した。歩きたばこ禁止条例のように、「歩きスマホ」禁止条例も施行されるのは時間の問題のようだ。
そんな中、「Smombie」増加をさらに加速させたのが、8月5日に日本でも配信が開始された『Pokémon GO』だ。配信直後の騒ぎは落ち着いてきたが「Smombie」製造機のようなものだ。一足先に配信がスタートしたアメリカでは、使用中の事故やトラブル、引ったくり事件、交通違反取締りなどがニュースで数多く取り上げられた。
『Pokémon GO』は、米のナイアンティック社による位置情報を利用したスマホ向け陣取りゲームアプリ「Ingress」と、コレクション要素の強い「ポケモン」が出会って出来上がったゲームだ。任天堂前社長の故岩田聡氏が、ゲーマーを狭い部屋から外に連れ出し、ゲームを社会や子供の親から嫌われないものにすることを目指した結果、普通のユーザーをもかつてない勢いで外に連れ出すことに成功した。その結果『Pokémon GO』は、親子の絆を深めるアプリとまで言われるようになったのだが、岩田氏もまさかゲーマーが「Smombie」化するとは思ってもいなかっただろう。
うつむいて歩く「Smombie」が増殖し、将来は自動運転のEVで高速道路上をさまよう「Smombie Car」も増え続けるに違いない。

| 16.08.19

トランスフォーマー建築

8月5日、南米初のオリンピックがリオ・デ・ジャネイロで始まった。
大統領の失権と財政難や治安の悪さ、果てはジカ熱の発生で開催が危惧されていたが、何とか実施にこぎつけたようだ。開会式に招かれていた日本を代表する某建築家は第一声で、「ブラジル人にもしっかりしている人はいる」とポジティブなコメントを発し、ブラジルのオリンピック開催に漠然と漂っていたミッション・インポッシブルな雰囲気を一気に吹き飛ばした。
リオ五輪にも色々評価出来るところはある。新たに建設された中小規模のスタジアムは、モジュール化されたプレハブ工法によってつくられた「再生可能な建造物」(https://www.olympic.org/news/nomadic-venues-will-be-transformed-into-rio-2016-legacy)らしい。規格化された鉄骨の柱や梁、鋼板、コンクリート床といった共通の部品と座席、そして競技自体に必要な床やプールといったものがパズルのような組み合わせで作られている。オリンピックが閉幕したら、それらは解体、搬出され、新たな用途の建物の一部として再び組み立てられる。まさに変形ロボット “トランスフォーマー” 的な建物なのだ。
例えば、ハンドボール競技場はジャカレパグア地区の500人規模の4つの小学校になり、ほかの競技場も、アスリートのトレーニングセンターや市民のレクレーション施設、国際会議場、展示ホール、イベント開催施設に利用する計画だそうだ。近年、主催者と開催都市に対し、聖火が消えて観客や選手が自国に帰ったあとの「五輪の遺産」(レガシー)についても考慮するよう指示している国際オリンピック委員会は、今回の計画を高く評価しているという。
リオ・デ・ジャネイロのパエス市長は、これを「遊牧民のような建築」と呼び、「リオ五輪はこれからのオリンピック開催都市の“手本”になる」と話している。
とはいうもののブラジルは現実、この数年で急速に深刻化した財政問題を抱え、政治も不穏な空気が続いている。せっかくのレガシー計画も、遅れで頓挫して解体された機材もそのまま放置されかねない状況だそうだ。次回開催国の日本から何かブラジルにできることはないのだろうか?
例えば、解体されたそれらのモジュール部品を日本のオリンピック委員会が輸入して、2020年の会場建設に利用したら面白い国際協力になるかもしれない。ブラジルの財政危機の緩和に、東京オリンピックが手を差し伸べられれば素晴らしいことではないだろうか。
小池新東京都知事の点数もぐっと上がるだろう!

| 16.08.12

テスラ

東京・青山のテスラモーターズのショールームに行列ができたことは記憶に新しい。テスラの400万円台の新型EV「Model 3」を予約するためだ。発表から3日間で全世界の予約件数が27万台を超え、1週間で32万5000台を受注したそうだ。
テスラモーターズ(https://www.tesla.com/jp/?redirect=no)は、Paypalの共同創業者イーロン・マスクがシリコンバレーで創業したベンチャー企業だ。2008年に発売された最初の「Roadster 」が約1000万円、次に発売された「Model S」もエントリーグレードで約800万円からと、高級路線をひた走ってきた。そのテスラが満を持して発表したのが、今までのイメージを覆す低価格のEV「Model 3」だったのだ。
しかも今回、ほとんどの消費者が実際に車を見ない、触れない、試乗しないで飛びついている。発表数ヶ月前から「Model 3」の噂を聞きつけ、“出たら直ぐに絶対に買うぞ!"がキーワードになったのだ。彼らにとって予約開始がまさにタイミングで、電気自動車が欲しいのではなく"テスラ"を手に入れたかったのだ。
一方、国産メーカーでEVを発売している日産と三菱自動車は、孤軍奮闘といった状況らしい。日産の主力EV「リーフ」は発売から5年で累計20万台以上を達成したものの、その販売ペースは決して順調とは言えないようだ。その日産が先ごろ「Model 3」の発売に対抗して米国の主要4紙に新聞広告を掲載した。マーケットに対し、「NO ONE HAVE ANY RESERVATION ABOUT GETTING AN ELLECTRIC CAR TODAY」と投げかけ、更に「And why drop $1,000 to stand in line when you can get $4,000 cash back and best-in-class range?」と畳み掛けている。しかしテスラ人気との相乗効果は全く見られず、リーフの販売は伸び悩んでいる。日産はテスラをリーフのコンペティターと勘違いしたのだ。
テスラを購入する人たちは、今までと違う新しい物が大好きで、テスラを車というより何かロボットペットのように捉えている。iPhoneを購入する感覚でテスラに接し、まるで乗れるスマホと考えているかのようだ。
テスラにはコミュニケーターとしてユーザーを惹きつけるストーリーがいくつもあるが、日産リーフは単に動力をモーターに変更した車でしかない。AI知能を持ち自らOSをアップグレードして進化して行く移動手段としてのテスラと戦うことは出来ないだろう。
これからはEVを自動車という概念で売るのではなく、まったく新しいカテゴリーの商品として存在させることに成功した会社だけが生き残れるのだろう。

| 16.08.05

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