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MUFGコイン

日本のメガバンクの雄である三菱東京UFJ銀行が、大手銀行としては世界で初めて仮想通貨「MUFGコイン」を2017年秋に広く一般の決済手法として発行することを発表した。(http://www.asahi.com/articles/ASJ69566CJ69UHBI00V.html)
「MUFGコイン」は円ペッグの仮想通貨で、最初は1円/1コインの交換となるそうだ。三菱東京UFJ銀行は日銀の金融政策を公然と批判し、最近では国債のプライマリーディーラー権も返上するなど、独自の判断を見せて注目されている。世界のメガバンク各行が独自の決済手法として仮想通貨を発行し、仮想通貨市場で独自レートで取引されるようになると、決済市場は新たな局面を迎えることになる。仮想通貨を取り込んだスマホをかざすことで現金を引き出せるATMも導入され、既存銀行のサービスより手数料が大幅に低下することになる。海外送金サービスなども数円の手数料で行われることになるのだ。
仮想通貨といえば、2009年に誕生し現在その約9割を占める「ビットコイン」は、世界の利用者が1200万人に広がっている。ただ日本では2年前に世界最大の「ビットコイン」交換所マウントゴックスが破綻して信頼を失い、誰もが「ビットコイン」の死を確信した。しかし「ビットコイン」は消えてなくなるどころか、その利便性からかつてないほど好調なのだ。既にDELLやExpediaなど、ビットコインでの決済を受け付けている企業が世界で100万社以上あり、日本国内でも楽天やリクルート、NTTドコモなど、仮想通貨で決済できる企業が続々と出てきている。またビットコインが利用できる飲食店では、支払い用QRコードを顧客のスマートフォンで読み取るだけの決済なので、簡単で低コストと好評のようだ。
仮想通貨には通貨価値が不安定という問題があるが、国家機関による統制が無いことや、マーケットによって価値が決められることから、ある意味公平な通貨として発展してきた。信用力の乏しい弱小国家の通貨に比べると大きな安心があるともいえる。
まだまだ危ういイメージがつきまとう仮想通貨だが、「MUFGコイン」の発行は一銀行が国に代わり、ドルやユーロに対抗しうる国際決済通貨を発行するという挑戦なのだ。カードの手数料より安価な決済コストで、売り手買い手双方ともに個人情報やカード番号などの入力が必要ない、仮想通貨決済は世界経済の必然ともいえるトップトレンドだ。
奇しくもマイクロソフトが2兆8000億円もかけて買収した今話題のLinkedInのオーナー、リード・ホフマンはネット決済“PayPal”の創業者でもあり、その売却益でLinkedInを創業したことは有名な話だ。

| 16.06.24

おそ松さん

5月18日号『an・an』は表紙が「おそ松さん」で話題になり、売り切れ続出となった。
「おそ松さん」(http://osomatsusan.com/)は2015年10月から2016年3月、テレビ東京他で放送された深夜アニメ。イヤミの「シェー」などで有名な昭和の名作ギャグマンガ「おそ松くん」が原作であり、亡き赤塚不二夫の生誕80周年を記念し、「おそ松くん」たちのその後の成長を描いたTVアニメだ。
夜中の1時過ぎに放映されたにもかかわらず、女性達を中心に人気を集め社会現象を引き起こすまでになっている。番組が終了した今でも「おそ松さん」の人気は冷めることを知らず、an・anの表紙にまでなったのだ。何故なのだろうか?
「おそ松くん」における6つ子は、ひとりひとりの区別がつかない無個性な集団として描かれていた。しかし「おそ松さん」では、まとめてワンセットだった6人をあえて差別化し個別のキャラクターとして仕立て直した。成人した6つ子男子は全員「無職で童貞」と一見若い女性がそっぽを向くような設定だが、それが現代日本の「リアリティのあるファンタジー」として描かれている。赤塚不二夫のギャグイズムを見事に受け継いだ笑いではあるが、現代日本への警鐘ともなる内容だ。
閉塞感に悩む「最底辺」での若者の格闘が立場を超えて多くの視聴者の共感を呼び、むしろ「受け入れやすさ」や「親しみやすさ」という効果をもたらしたのだろうか?声優陣が人気イケメン揃いだったことが、腐女子オタク女性や乙女ゲーム好き夢女子たちにまず見るアニメとして選ばせることに奏効したのか?
株式会社日本リサーチセンターが行った『第6回世界価値観調査』(http://www.worldvaluessurvey.org/wvs.jsp)によると、未婚率が上昇している日本において、未婚男性の「不幸」感は諸外国と比較して抜群に高いらしい。「結婚がわずらわしい」という意識と同時に、「結婚したくてもできない」という非自発的な要素も大きいようだ。6つ子たちもアニメの中で「働きたくない」「養ってほしい」「このまま親のスネをかじって暮らしたい」と臆面もなく語る。「おそ松さん」は現代社会を大いに皮肉るギャグ漫画だから笑えるが、現実は笑えない悲惨な状況である。
政府は女性の働く環境改善ばかりに目を向けて少子化担当相は女性にしているが、子作りは共同作業、男性若者社会が抱える底なしの闇を無視してはいけない。猟奇殺人事件大国の日本は、米国の銃社会と同じく深い闇を持っていると考えた方が良いのではないだろうか?

| 16.06.17

新・貧困

今年のカンヌ国際映画祭で、壮絶な貧困を描いたイギリスの80歳の巨匠ケン・ローチによる『I, Daniel Blake』がパルムドール賞を受賞した。
デビュー以来、労働者階級や移民といった社会の底辺で生きる人々の過酷な日常を映し出してきた巨匠が今回テーマにしたのは、母国イギリスの新しい貧困の問題。心臓発作を起こして大工の仕事を続けられなくなった59歳のダニエル・ブレイクが、失業手当を申請しようとするも行政に翻弄されて尊厳を失っていくさまを通して、貧困の壮絶な苦しみ、そして人としての尊厳を失うとはどういうことなのかを容赦なく突き付け、現代における貧困とその不条理さを浮き彫りにしている。
イギリスの慈善団体クライシスが1月に、「ロンドンの路上で夜を明かす人々の数は、2009年と2010年には3673人であったが、2015年には7500人に増えた」と発表。その理由として、他のヨーロッパ諸国からロンドンに移住した人々に対するイギリス政府の支援策の失敗を挙げている。近年のイギリスでは、政府が社会保障支出の削減を進めようと「働き者と怠け者」(給付受給者は怠け者で、ちゃんと働く人が不利益を被っている)というレトリックを使ったため、病気や障害で働くことができない人たちや本当に給付を必要としている人たちまで悲惨な状態に追い込まれているという。
またアメリカでは昨年の秋3つの都市で、ホームレス増加による非常事態宣言が相次いで発令された。特に南の楽園ハワイでの非常事態宣言(http://edition.cnn.com/2015/10/17/us/hawaii-homeless-emergency/)は世界の人々に衝撃を与えた。米国勢調査局によると、ハワイの人口は約136万人だが首都ワシントンD.C.に次いで全米で2番目にホームレスが多く、住民10万人あたり465人と、その割合は全米50州で最も高いといえるようだ。摩天楼の影に、そして楽園のビーチに、すべてを失った人々が生きている状況は何を示しているのだろうか?
リーマンショック以降、アメリカは相次ぐ金融緩和を行うことで辛うじて株価を維持してきた。その結果アメリカのみならずG7と呼ばれる経済先進国?では、実体経済に必要なマネーサプライの3倍以上の巨額な資金がマーケットに投入されている。そして人口の1%と言われるスーパーリッチが出現している反面、実体経済は疲弊し底辺であえぐ人々が増えて来ているのだ。ダブついた資金の引き締め目的でFRBは利上げのタイミングを窺うが、利上げはドルを強くし持てる者を更に強くするだけでもある。
トランプが大統領候補になったのも頷ける。

| 16.06.10

Singularity

2045年にコンピューターの能力が人類を越える日「Singularity」がやって来るという予測がある。
人工知能(artificial intelligence、AI)が自らを規定しているプログラムを自身で改良するようになると、永続的に指数関数的な進化を遂げる。この結果、ある時点で人間の知能を超えて、発明などはすべて人間ではなく人工知能が担うようになり、それ以降の進歩は人間がいくら考えても想像ができないレベルに達する。レイ・カーツワイルは、著書『The Singularity Is Near: When Humans Transcend Biology』の中で、2045年にその特異点を迎えると予言している。
今やチェスも将棋もコンピューターが人間の能力を上回るが、囲碁だけは10年以上先になるだろうと言われていた。しかし、2016年3月にGoogleの子会社が開発したAIのコンピュータソフト「AlphaGo」(https://www.deepmind.com/alpha-go.html)が、韓国屈指の棋士である李セドルと対局し勝利した。各国の棋士の実力を比較しインターネット上で公開している「Go Ratings」の評価によると、今回の一戦を制した「AlphaGo」は世界4位となり、敗れた李セドルは5位についている。ちなみに1位は若くして名高い中国の柯潔、2位は韓国の朴廷桓、そして3位には日本の井山裕太が続いている。
しかし、チェスや将棋、囲碁など、特定の分野だけを対象としない汎用人工知能(General Artificial Intelligence、AGI)の開発は、まだまだ実現困難とされている。やっと「AlphaGo」に「ディープラーニング(深層学習)」と呼ばれる人工知能の新技術を取り入れ、自分自身と戦わせるなどして囲碁の特徴を自己学習できるという進展を見せるようになった段階なのだ。
人々の想像を掻きたてたドラえもん、鉄腕アトム、ターミネーターの「T800」や「スカイネット」、2001年宇宙の旅の「HAL9000」などなど…いわゆる感情を持った存在こそが、AGIであり人間と比較出来る人工知能といえる。
スティーヴン・ホーキング博士も、以下のような予言をしている。
「完全な人工知能を開発できたら、それは人類の終焉を意味するかもしれない」、「人工知能が自分の意志をもって自立し、そしてさらにこれまでにないような早さで能力を上げ自分自身を設計しなおすこともあり得る。ゆっくりとしか進化できない人間に勝ち目はない。いずれは人工知能に取って代わられるだろう」、「人工知能の発明は人類史上最大の出来事だった。だが同時に、『最後』の出来事になってしまう可能性もある」
しかし、ホーキング博士は人間の進化は肉体の限界に対する挑戦がモチベーションになっている事をよく知っているのではないだろうか。モチベーション無しには流石のAIも進化の方向を定めきれないだろう。

| 16.06.03

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