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大和ことば

最近大和ことばが、特に女性達の間で再評価されているらしい。きっかけは、高橋こうじ著『日本の大和言葉を美しく話す』(東邦出版 http://www.toho-pub.net/product_info.php?products_id=654)だ。デートを指す「おうせ(逢瀬)」、妥協するという意味の「おりあう(折り合う)」など、日常で使える大和ことばを語源など交えて紹介し、27万部を売る人気だという。
メールやLINEでのやり取りが多くなると用件を手短に伝えるだけになってしまい、変な略語まで氾濫する一方で、穏やかなことばを使いたいという気持ちが湧き、大和ことばへの興味につながっていると推定される。
大和ことばは日本語から漢語や外来カタカナ語などを除いたもので、万葉集や古事記にも見られる古くからの言葉だ。言葉の響きが柔らかで好印象を与えるという効果があり、日本の風土の中で生まれた言葉なので、日本人の心にすっと入って情景が浮かびやすい。もっとさかのぼると、縄文時代の言葉の音に近く、意味が容易に伝わる表現と言うこともできる。
読者にとことん身近な例文を紹介しているのが、1月に発売された海野凪子著『大和言葉つかいかた図鑑 日本人なら知っておきたい心が伝わるきれいな日本語』(誠文堂新光社)だ。「若干」ではなく「いささか」と言えば、奥ゆかしさが伝わり、「詳細に」ではなく「つぶさに」と言えば、相手にやわらかな印象を与える。日本語らしい日本語ということか?
ヨーロッパがローマ時代の頃、アジアでは漢が全盛期だった。漢字は、270~310年頃に『論語』、『千字文』が百済から到来したことで初めてもたらされたとされているが、実際はもっと早く1世紀ごろにはもう朝鮮半島を経て入ってきたとも言われている。当時世界最先端だった中国の漢語は、話し言葉だけだった日本に文字という強烈な伝達方法を持ち込んだ。音では理解できなくとも見ればその意味を理解できる表意文字として、漢語は圧倒的に進んだ文明だった。そうした高度な言語による侵略を受けながらも生きながらえてきた言葉が大和ことばだったと言えよう。
2000年前には漢語、漢字による外来語、明治以降には欧米からの英語・米語などカタカナによる外来語と、幾度も侵略されながらも、しなやかさを失わなかった大和ことば。使いこなせばビジネスにも有効かもしれない。

| 16.02.19

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