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ホログラムロボット

大好きなキャラクターと一緒に暮らしたい。そんなオタクの夢をかなえるホログラムコミュニケーションロボット「Gatebox」計画を、IoT製品の企画・開発を手掛ける株式会社ウィンクル(http://vinclu.me/)が1月に発表した。
「Gatebox」は、ホログラム投影技術と各種センサー技術を活用し、手のひらサイズのさまざまなデジタルキャラをホログラムで出現させて、双方向コミュニケーションを取れるというものだ。キャラクターはユーザーの行動を認識して、朝になると起こしてくれたり、夜に帰ってくると優しく出迎えてくれたりするそうだ。またインターネットや家電とリンクして、今日の天気を伝えたり、お風呂あがりにテレビをつけたりといった、日常のちょっとしたお手伝いも可能だ。全てのオタクの夢であった、画面の向こうにいるキャラクターとの「次元を超えた共同生活」を実現していこうとしている。「次元の壁を壊したい」というティーザーサイトからの、ホログラムロボットで“俺の嫁”を作るといった熱い試みもあるようだ。
ウィンクル代表取締役社長の武地実氏は、「もともと初音ミクと暮らしたいと思ったことが開発の動機だった」と言う。彼らの考えるIoTは、便利さじゃなくて、“好きなキャラクターとの共同生活”を実現することだと言い切っているところがユニークだ。
初音ミクの武道館ライブに行くファンは、初音ミクが物理的な存在かどうかにはまったく興味がないそうだ。それは日本だけにとどまらず、世界中で同じ現象が起きているという。「Gatebox」の動画には米国、フランスをはじめ世界中からアクセスがあり、ウィンクル社は、アニメ「PSYCHO-PASS」に登場するホームセクレタリー・アバターのキャンディのように、将来はあらゆるコミックキャラがホログラム化されて登場してくるだろうと予想している。「人口知能(AI)を持ったホログラムロボットのドラえもんが、一緒に家に住んで面倒を見てくれる」という漫画と同じシチュエーションの実現がもうそこまで来ているのか?
こうなってくると生身の人間の存在価値とはいったい何だろう?という疑問が湧いてくる。しっかりと教養を身につけて新技術を開発し世界を変える側に立っていないと、AIで進化するアバターに使われてしまうことにもなりかねない。近い将来、アバターより上位概念の存在として生き続けることが難しいという世界がやってくるだろう。

| 16.02.26

大和ことば

最近大和ことばが、特に女性達の間で再評価されているらしい。きっかけは、高橋こうじ著『日本の大和言葉を美しく話す』(東邦出版 http://www.toho-pub.net/product_info.php?products_id=654)だ。デートを指す「おうせ(逢瀬)」、妥協するという意味の「おりあう(折り合う)」など、日常で使える大和ことばを語源など交えて紹介し、27万部を売る人気だという。
メールやLINEでのやり取りが多くなると用件を手短に伝えるだけになってしまい、変な略語まで氾濫する一方で、穏やかなことばを使いたいという気持ちが湧き、大和ことばへの興味につながっていると推定される。
大和ことばは日本語から漢語や外来カタカナ語などを除いたもので、万葉集や古事記にも見られる古くからの言葉だ。言葉の響きが柔らかで好印象を与えるという効果があり、日本の風土の中で生まれた言葉なので、日本人の心にすっと入って情景が浮かびやすい。もっとさかのぼると、縄文時代の言葉の音に近く、意味が容易に伝わる表現と言うこともできる。
読者にとことん身近な例文を紹介しているのが、1月に発売された海野凪子著『大和言葉つかいかた図鑑 日本人なら知っておきたい心が伝わるきれいな日本語』(誠文堂新光社)だ。「若干」ではなく「いささか」と言えば、奥ゆかしさが伝わり、「詳細に」ではなく「つぶさに」と言えば、相手にやわらかな印象を与える。日本語らしい日本語ということか?
ヨーロッパがローマ時代の頃、アジアでは漢が全盛期だった。漢字は、270~310年頃に『論語』、『千字文』が百済から到来したことで初めてもたらされたとされているが、実際はもっと早く1世紀ごろにはもう朝鮮半島を経て入ってきたとも言われている。当時世界最先端だった中国の漢語は、話し言葉だけだった日本に文字という強烈な伝達方法を持ち込んだ。音では理解できなくとも見ればその意味を理解できる表意文字として、漢語は圧倒的に進んだ文明だった。そうした高度な言語による侵略を受けながらも生きながらえてきた言葉が大和ことばだったと言えよう。
2000年前には漢語、漢字による外来語、明治以降には欧米からの英語・米語などカタカナによる外来語と、幾度も侵略されながらも、しなやかさを失わなかった大和ことば。使いこなせばビジネスにも有効かもしれない。

| 16.02.19

ミドル創生

「こんな日にフォロワーさん28万になりました。こんな日に。」
「なんて日だ!」
2016年2月4日、最近人気のシャープの公式ツイッター(https://twitter.com/sharp_jp?lang=ja)はこう呟いた。台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業の再建案を軸に再建を目指すことが発覚した、まさにその日だ。
シャープの公式ツイッターは、現在28万人ものフォロワーを抱える巨大アカウントで、日本有数のテクニックでツイッターを使いこなしていると話題を集めている。この日も、なんとお笑い芸人「バイきんぐ」の代表ギャグ「なんて日だ!」で、まさに最高のタイミングすぎるツイートに、ネット上では称賛の声が挙がっていた。誰でもどこかに取り柄は在るものだ。
しかし、シャープの経営陣は保身に走り、企業ではなく役員幹部に優しい案を求めて右往左往している様に見える。産業革新機構の事実上の国有化案と鴻海の一括救済案のどちらを選ぼうと、待っているのは地獄のリストラだという事を知るべきだ。
シャープの創業者早川徳治は1915年21歳の時に「早川式繰り出し鉛筆」シャープペンシルを発明し、それが社名の由来になっている。まさに時代の変化を先取りして機敏に成長事業を育てて来たわけだ。しかし現在のシャープ再生は、片や国策での事業統合、片や創業精神でトップダウンによる事業統合だ。効率化はいかなる場合にも必要だが、時代の先取りは更に重要だ。どちらの案にもクリエイティビティーを全く感じない。
今の日本の教育はサラリーマンを大量生産するシステムだ。常に強烈な起業家を生み出せないと企業がダメになると思われがちだが、果たしてそうだろうか?アジアから日本の企業を見ていると、日本企業の宝は役員ではなく「課長」達だとつくづく思う。日本企業のもの言う企画力あるミドルの力は、買収で大きくなった欧米アジアの企業にはない財産だ。この財産をどう生かすかが今回の再生のポイントだろう。
その昔中国を世界最大の経済大国にしたのは、身分を超えて国中から優秀な人材を登用した科挙制度だと言われる。鴻海の郭会長が欲しいのは「現代の科挙制度」を通った日本の課長達なのではないだろうか?
産業革新機構案は日本の課長の価値に全く気がついていない。余りにも幼稚な単なる業界再編案だ。情けない。第三の案、即ち優秀な日本のミドルとそのクリエイティビティーを生かす案を出す時だろう。
素晴らしい公式ツイッターを作れる様な人材がまだ社内に残っているうちに。

| 16.02.12

ギョ―女(じょ)

今、巷で「ギョ―女」なる餃子にハマる女子の人口がじわじわと増加中だ。
ここ数年“女子ウケする餃子店”が一気に増え、餃子=おしゃれフードになりつつあるのだ。中でも青学の裏のグルメストリートにある「GYOZA BAR」(http://www.aoyama-gyozabar.com/)は、話題の フレンチ「鳴神NARUKAMI」の鳴神シェフのプロデュースしたお店で、パリで流行った佐藤伸の餃子バー「パサージュ53」(http://www.passage53.com/)をヒントに、ワインと餃子を合わせ人気上昇中だ。シンプルな肉餃子からパクチー餃子、餃子が入ったオニオンスープ、フレンチシェフならではの3種類の特性ソースも面白く、夜の2軒目にも気軽に使える。
最近のギョ―女の好みの傾向は大きく分けて2種類。ひとつは、ニンニクやニラが入っていないのに味わい深い本格的な焼き餃子。ふたつ目は、様々な味の焼き餃子。具材にできる材料のバリエーションが広く食べ比べがいがあるところが、女子たちの心をつかんでいるらしい。あえて餃子のようなB級グルメを食べているのがオシャレという感覚の女子も増え、女の子らしいカフェごはんより誰もが親しみの持てる焼き餃子が、SNSにUPしたい食べ物として人気を上げてきているようだ。
そもそも本場中国の基本は水餃子。位のある人や裕福な人が食べて、残ればそれを使用人に下げ渡す。もらった使用人は仕方なく翌日固くなった水餃子を焼いて食す。中国は下男下女が焼き餃子だが、日本では老若男女共何故か焼き餃子なのだ??
餃子の町として知られている宇都宮には戦前満州に出兵した第14師団の駐屯地があり、戦後満州から復員してきた兵隊たちが製法を伝えたために餃子専門店が多くでき、今では消費量が日本一といわれるようになったそうだ。一方、昨年消費量日本一の座を奪った浜松でも、満州で製法を覚えた復員兵が作ったのが始まりと言われている。どちらも日本陸軍に関わっている。
しかし、日本陸軍はなぜ焼餃子だったのか?軍隊が雇った賄いが下男下女だったとも考えられる。戦争中に食文化が交わり、いろいろなドラマを繰り広げながら焼き餃子も海を渡り、日本のソウルフードとなったわけだ。
春節に来日する中国人にとっても、日本の餃子は既に中華料理というより日本の大衆料理として受け入れられている。因みに横浜中華街で焼き餃子を出す店を探すのは難しい。
ギョ―女人口が広く増えていく日本列島は、各国の食文化が混ざり合う、正に「和」食の国なのだろう。

| 16.02.05

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