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宗主国責任

先週パリで起きた同時多発テロを受け、Facebookは「パリ市民の安全と平和を願うプロフィール写真を設定しよう」と、プロフィール画像にフランス国旗と同じ色を重ねられる機能を追加した。画像を変更して犠牲者に追悼の思いを示す動きが広がる中、「シリアでの空爆はテロではないのか?」といった批判も寄せられている。
「なぜ、空爆や自爆テロで多くの人が死んでいるシリアやパレスチナの人々を同じように支援しないのか?」「なぜフランスだけなの?」など、フランス国旗に限定したことを疑問視する声があった。クウェート紙アルライが「世界にとってレバノンの犠牲者はパリと同等でなく忘れ去られた、とレバノンの人々は感じている」と伝えており、「レバノンの国旗が同様にフェイスブックに追加されるまで、私の画像は変えない」という意見も多くあったようだ。全く代弁もされず、クローズアップもされず殺されていく人たちがいる中で、声の大きい先進国の悲劇だけが大きく伝えられることへの違和感についての報道は、9.11の時には見られなかった反応だ。
第1次世界大戦に勝利したイギリスとフランスは、オスマン帝国がそれまで支配していた広大な中東のアラブ・イスラム圏を事実上の植民地として分割支配するに至った。現在のヨルダン、イラク、パレスチナは英国の植民地(名目上は国際連盟の委任統治領)に、現在のシリア、レバノンは英仏間の密約(サイクス・ピコ条約)でフランスの植民地になった。現代の不安定な中東情勢の原因の多くは、この英・仏の植民地政策にはじまったと言っても過言ではない。両国の植民地政策の失敗がテロを招き、イスラム圏との対立を生み、IS(イスラム国)の出現を許したとも言える。
アメリカがテロ対策だとしてパキスタンで行っている無人機攻撃で家族を失った11歳の少女が、時を同じくして東京都内で講演した。彼女は報復を止められるのは更なる報復ではなく教育だけだと訴えた。しかし、この間もアメリカは無人機を使ってパキスタン国内のイスラム過激派などへの攻撃を続けており、国連の調査によると、これまでに巻き込まれた一般市民や子ども達の犠牲者は少なくとも400人以上に上るとのことだ。
ISのテロを考える時、米・英・仏等先進国が行っている“テロ”についても考えなければ、永遠に問題は解決しないだろう。

| 15.11.20

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