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ジャパンウエイ

イングランドとウェールズで開催中の第8回ラグビーワールドカップにおいて、過去28年間の7大会で24戦して1勝しかできなかった日本代表が、3勝1敗という堂々たる成績を残した。
惜しくも8強入りは逃したが、特に初戦で優勝候補の1つであった南アフリカに逆転勝利したことは、いろいろな意味でラグビー界にセンセーションを巻き起こした。ティア2の日本が、ティア1の最強チームを下したことは、根強い人種差別が残るラグビー界を震撼させるに十分だった。
かつての白人政権時代、南アフリカでは「紳士のスポーツ」ラグビーをやるのは白人、「民衆のスポーツ」サッカーをやるのは黒人と決まっていた。しかし、アパルトヘイト撤廃の先頭に立ち同国初の黒人大統領になったネルソン・マンデラは、黒人と白人の融和を成し遂げる為に、アパルトヘイトの象徴であったラグビーを利用して1995年ラグビーワールドカップを自国で開催し、『ワン・チーム、ワン・カントリー』というスローガンの下、白、黒、ブラウン、いろんな肌色の男たちがニュージーランド代表との激闘の末優勝を遂げ、歴史は大きく動いたのだ。今回は、世界最強のニュージ―ランドを破った南アフリカを日本が更に破ったと言える。
ところで、1904年~1905年にかけて、日露戦争における日本海海戦での日本の勝利は、16世紀の大航海時代から続いていた「白人による世界支配」の時代に楔を打ち込み、世界史の重大な転換点となった。それまで欧米列強の草刈り場と化していたアジア・アフリカ諸国にとって、日本が「希望の星」になった時でもあった。世界の近代史における日本の役割「ジャパンウエイ」には常に欧米列強にアジアを代表して喰い込んで行く先進性がある。それはG7唯一の非欧米国である事でも示されている。そもそも日本は第一次世界大戦後のパリ講和会議で世界で最初に人種差別撤廃提案をした国であるが、英米などの反対によりかなわなかった経緯がある。
それにしても、ラグビーワールドカップ予選史上初の、3勝しても8強に入れなかった差別の壁は厚い。フタを開けると参加102カ国中、8強は全てティア1と呼ばれる大英帝国の連邦国を中心とした特別扱いの国で占められていた。予選グループを5カ国とする方法は、ティア1諸国を優位にする絶妙な仕掛けだ。同じ英国発祥のスポーツであるサッカーは、大衆から生まれただけにこの様な不合理なグループ分けは行わない。
そこまでして、白人優位を演出して、「ノブレス・オブリージュ」の精神はどこへ行ったのだろうか?

| 15.10.16

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