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微生物上位

2015年のノーベル医学・生理学賞は、北里大特別栄誉教授の大村智氏(80)ら3氏に授与すると発表された。大村智氏は、微生物が作り出す有用な化合物を多数発見、医薬品などの開発につなげ、医療や科学研究の発展に大きく貢献した、その功績が評価された。
「微生物」が、私たちが生きていく上で、そして地球環境が守られていくために無くてはならない大切な存在だと知らしめた功績だ。自然界において微生物の担っている最も重要な役割(仕事)が『分解』であると意識させたことも面白い。
自然界で枯死した植物、動物の遺体、排泄物などは微生物の力によって分解され、最終的には二酸化炭素、水、無機物となる。微生物の働きがあるからこそ生態系は成り立っているし、微生物がいなければ有機物は分解せず、動植物の死骸がるいるいと地球上に堆積し、我々はその死骸の中で暮らすことになった筈だ。想像もできないことだ。
1グラムの土には1億もの微生物がいるそうだ。大村氏は70年代から各地で土を採取して微生物を分離・培養し、微生物が出す化学物質に有用なものがないか、薬をつくり出す菌もいるだろう、と年間3千もの菌をひたすら調べ続けて有用な化合物を多数発見してきた。大村氏は会見で「研究成果は微生物から力を借りただけ」と語っていたが、この謙虚さが世界を救うことに繋がったのだろう。
しかし、最近の「抗菌」、「除菌」ブームでは、微生物は「バイ菌」と言われて嫌われることが多くなった。実は身体も環境も食品も沢山の微生物によって支えられているのに、微生物なしに人間の生活が成り立たないことは意外に忘れがちだ。味噌や醤油、納豆といった日本人に身近な発酵食品にも微生物の役割は欠かせないが、実生活では“菌”に対する考え方に大きなズレが生じている。地球上に生命体が誕生するはるか以前から、地球環境が微生物たちの活動によって支えられてきたことを忘れてはならないだろう。
人間が居なくなっても地球は緑の星としてその美しさを保ち続けるが、地球から微生物が居なくなったら死骸の堆積する死の星となってしまうのだ。
大村教授の感動的に謙虚な姿は、自然界において微生物は人類よりも価値があり、上位に位置付けられていると知っていることから来るのだろう。

| 15.10.09

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