ポジティブ・デブ
イギリスの広告基準協議会(ASA)が、「サンローラン(SAINT LAURENT)」の2015年春夏コレクションの広告に対し、イギリス国内での掲載禁止を通告した。問題になったのは、イギリス版「エル」に掲載された、モデルのキキ・ウィレムスをエディ・スリマンが撮影した広告ビジュアルだった。「モデルのあばらが浮き出ており、太ももと膝が同じ細さであるため、非常に低体重に見える。このような広告を発表することは無責任である」というのが理由だ。またフランス下院は4月、痩せすぎのファッションモデルの活動を禁止し、そのようなモデルを雇用した業者に最大7万5000ユーロ(約980万円)の罰金や最大6カ月の禁固刑を科す法案を可決している。
ひるがえって日本では、夏に向けてダイエット本が増え続け、テレビをつければダイエット特集、雑誌を見てもダイエット特集と、デブには何かと肩身が狭い季節が続いている。しかし今、世界は、太っている=不健康、カッコ悪いと決めつけることに疑問を感じ、痩せ過ぎはむしろ不健康であると欧米のメディアが警鐘を鳴らしている。
厚生労働省の研究班が発表した『肥満指数(BMI)と死亡リスクを巡る調査』や、アメリカの医学誌に発表されたレポート『健康長寿のマッスルデブを目指せ!』など、さまざまな研究結果や統計によると、ガリガリ体型やスマート体型よりも少し太っている人(ポジティブ・デブ)が長生きするらしい。また、中高年の日本人男性16万人を10年以上にわたり追跡した国立がん研究センターの研究結果(http://epi.ncc.go.jp/riskcheck/)によると、がんで死亡するリスクが最も低い体型が170cm、75kgのぽっちゃり体型(ポジティブ・デブ)となっている。
昨年健康診断の新基準値が発表され、男性のBMIは27.7まで、女性は26.1までは健康、と変更された。BMI値25以上をメタボ肥満だとし、欧米諸国と比較するとかなり厳しいと言われていた日本の判定基準が大幅に緩和されたことで、やっぱりねと言いたい人は多いだろう。
日本は男女ともに世界に誇る長寿国と言われているが、一方で日本は長生きなのに幸せそうじゃない国とも言われている。そりゃそうだ。健康なのに不健康な体型だと言われ続ければ気が滅入ってくるのは当然だろう。ポジティブ・デブの時代は、戦後長らく続いた医師会の力が衰えたことを示しているのかもしれない。良い事だと思う!
| 15.07.03