W杯裏大会
5月27日、4年に一度のFIFA会長選のため加盟209カ国地域のサッカー協会代表が集まるスイス・チューリヒの超豪華ホテルで、国際サッカー連盟FIFA( http://www.fifa.com/)の幹部14人が、ゆすり、電子的通信手段を使った詐欺、マネーロンダリング(資金洗浄)の容疑で、米国司法当局の手で一斉に逮捕、起訴された。
逮捕された14人の中には実行委員会のジャック・ワーナー元副会長、ジェフリー・ウェッブ氏ら現職副会長2人、スポーツマーケティング部門の幹部4人も含まれているそうだ。巨額の放映権料などスポーツマーケティングを通じて賄賂やキックバックを要求し、1億5千万ドル以上の不当利得を隠していたらしい。すっかりカネまみれ、疑惑まみれになっているFIFA、その腐敗の実態が明らかになりつつあるようだ。しかし、FIFAの本部はスイスのチューリッヒにあるのに、なぜアメリカの法律で裁くことになるのか?なぜ中南米系委員ばかり捕まったのか?なぜ会長のプラッターは捕まらなかったのか?
かつてIOC(国際オリンピック委員会)が招致活動にまつわる金銭スキャンダルに見舞われた時は、内部に調査委員会をつくって対処し、どこかの国の法律で裁かれるということはなかった。IOCでは、16人の委員が疑惑の対象として調査され、そのうち6人がIOCを除名され、1人が戒告処分を受けている。
今回のFIFA問題のマスコミの報道を見ても、アメリカの司法当局が裁くことの正当性についてはなんの説明もない。中立的な国であるはずのスイスだが、司法当局は完全にアメリカに動かされているのか? アメリカを基点として始まったオリンピックの商業化が、IOCの腐敗、ひいてはFIFAの腐敗を生んだにもかかわらず、それが目にあまる状態になると、再びアメリカを発火地として不正たたきが始まり、アフリカや中南米の発展途上国の委員たちが狙い撃ちされて除名されるという経緯は、利権にむらがるヤクザの内部抗争と同じだ。
米国は中国の南沙諸島への実行支配を非難しているが、FIFAに対する米国の傍若無人ぶりも、ロシアのクリミア支配も皆似たような話だ。IOCやFIFAといった組織は、超大国の裏世界の代理戦争の場といってもいいだろう。アメリカは裏大会でハットトリックを狙っているのか?
| 15.05.29
ハンドメイド・マーケット
GMOペパボが運営するオンラインのハンドメイド・マーケット「minne」(https://minne.com/)が注目を集めている。フリーマーケットアプリの「mercari」(http://mercari.jp/)が1500万ダウンロードを突破したほか、「Fril」や「LINE MALL」も人気で、それらにつられるようにハンドメイド・マーケットへの注目も高まっている。
「minne」は、2012年1月にスタートした、ハンドメイド作品を売り買いできる「CtoC」のオンラインマーケットサービスだ。2010年頃からこの業界に参入しているさまざまな企業の中では後発だが、可愛い雑貨が受けて急成長を遂げている。現在登録作品数は100万点、登録作家数は10万人を突破した。1月から開始されたテレビCMも好調で、約1ヶ月でアプリが100万ダウンロードを超えるなど、主婦や学生を中心に支持を得る国内最大のハンドメイド・マーケットに成長してきた。2月に開催された第1回「ハンドメイド大賞」には約1万3,000点の応募作品が集まったが、こうした作り手と買い手の双方が楽しめる場を提供しているのも人気の理由のようだ。
一方、ハンドメイド・マーケットECサービスの先駆者であり、各国で市場を牽引してきたアメリカの「Etsy」(https://www.etsy.com/)が4月17日にNASDAQに上場し、初日は、公募価格の86%高の30ドルで取引を終了した。2005年からサービスを開始した「Etsy」は、現在日本語版も暫定公開するなど、既に200カ国以上でサービスを展開中だ。アメリカ国外の利用者が全体の3分の1を占め、100万店舗、2600万以上の商品点数、4000万人以上のユーザー、と世界最大のマーケットとして圧倒的な数字を誇っている。カナダやイギリスなどの英語圏はもちろん、イスラエルやトルコといった中東諸国からの作品も並ぶ国際色豊かなハンドメイドECサイトだ。
1995年の「eBay」創立に始まる「CtoC」の価値交換の世界は、「Etsy」などハンドメイド・マーケットプレイスに至ることで、世界70億人の人々をダイレクトに結び各々の創造物の直接交換を可能にする民主的な世界へと発達してきた。
現在「BtoC」の世界でこの世の春を謳歌するコンビニも、「CtoC」流通革命の破壊力を認識する時がもうそこまで来ているのではないだろうか?
| 15.05.22
Blush
ニューヨーク・タイムズのメディアラボが作った、会話の内容に反応して光るソーシャル・ウェアラブル・デバイス、「Blush」(http://blog.nytlabs.com/2014/01/15/blush-a-social-wearable/)が話題になっている。
「Blush(赤面)」と呼ばれるそのブローチを装着していると、日常的な会話の中でブローチの持ち主が最近オンラインで検索したワードに話題が及んだ時に発光するというLED製品だ。会話に参加している人は、ブローチが発光したのを見て、持ち主がその話題について何か知っていることが分かるという仕掛けである。ビッグデータ至上主義の現代は、たっぷりデータを集めていろんな方法で加工しさえすれば情報が知恵に変わると思い込んでいるが、それは単に定量化しやすいものを処理しているだけの話だ。日ごろ出くわしているはずのいいアイデアやコンセプトといったものが、そこから抜け落ちてしまっていることもままある。「Blush」はそれを解決する為に開発されたのだそうだ。
意見の飛び交う会議の中で「Blush」を使って、誰がその情報に関する知識を持っているのか、どの議題に着目しているのかを可視化することで、今までこぼれ落ちていたアイデアを拾い上げることができるようになるかもしれないという。データ主義ではなく、そのデータを使いこなして魅力的なものに加工することに価値を置いているのだ。
ところで、先月発売されたApple Watch。アップルストアでの当日販売はなかったが、家電量販店などには多数の在庫があったようだ。「話題のアップル製品」でありながら、当日の夕方たまたま見かけて入手できたという人などから、ネットには続々とレビューが上がってきていた。Apple Watchの謳う最大の価値は、「携帯を取り出すより楽」なことと「グランサビリティ(一目瞭然性)」だ。しかし、通知を見た後にアプリでなにかをするとなると、プロセス数が少ないのに遅いという欠点があると言われている。そのため結局、「これってiPhoneでも出来るよね」「iPhoneの方が便利」に戻ってきてしまうようだ。
スマホやタブレットのスクリーンは様々な情報を伝えるが、ウェアラブルデバイスの領域では、なんと言っても情報をざっくりと一目でわかるように伝えることが重要だ。Apple Watchに「Blush」を搭載すればかなり面白く有用なビジネスツールになるかもしれない。まだまだ改良は必要だが、ポケットからスマートフォンを取り出す必要のない新しい日常が近づいている。
| 15.05.15
チープ・ジャパン
今週の為替で比較すると、日本のユニクロで1,990円のポロシャツは、タイのユニクロでは790バーツなので約2,900円となる。購買力平価が低いタイ人には更 に高く感じるはずだが売れている。
同商品を他のアジア諸国で価格比較してみると、中国が約2,500円(129元)、台湾は約3,000円(790NTドル)、シンガポールは約2,600円(290Sドル)、そしてインドネシアは約2,750円(290,000ルピア)になっている。ちなみに、アメリカは約3,000円(24.9USドル)、イギリスは約2,700円(14.9ポンド)となるが、購買力平価を考えると日本とほぼ同額とも言える。ユニクロは日本国内や欧米では高品質低価格を武器に成長してきたが、アジアでは高価で高級なブランドとなっているのだ。東京・銀座に大規模な旗艦店を開業し、アジアでは高級ブランドが密集する拠点にあえて店を構え、高品質を印象づけて付加価値を付けることに成功していると言える。
去年あたりから、アジア各国からのインバウンド客が、銀座ユニクロに真っ先に足を運び、中には段ボールで爆買いする姿が見られるのも頷ける。アジア人にとって、既に日本は高質で安いのだ。タイでは一風堂のラーメンが円換算で1,300円、さぼてんのトンカツも1,300円と、共に日本の価格の1.5倍を上回るも人気絶大で、大戸屋に至っては値段的には高級和食店の趣すらある。今や常時バーゲン状態に見えるほど日本国内価格は安く、外国人にとって「チープ・ジャパン」というイメージが定着している。
日本の価格を安く見せているのは、その品質の高さでもある。ユニクロの素材、立体裁断と縫製技術の高さは他の追随を許さない。日本のファストフードも食材の質と味、そして安心感はピカ一だ。一方特別な品質感のないビックマックの単価を見てみると、日本が370円のところ、アメリカ564円、イギリス514円、シンガポール415円、タイ358円、中国326円、台湾295円、インドネシア264円となっている。これは過去20年間日本の物価上昇が止まり、購買力平価が大きく下がって東南アジア並みになっていることを意味している。
しかしアベノミクス的に考えると、この「チープ・ジャパン」を数年続けることで、日本の高質な商品は世界中に浸透することになる。経済回復が明らかになった時点で、再度購買力平価のバランスを上げ戻し、結果東京オリンピック開催の2020年をターゲットに1ドル80円、株価2万5,000円ぐらいを達成できれば、日本の経済は甦る?と言うことらしい。
| 15.05.08