ヒッピー的
エナジードリンクの市場は世界全体で約8000億円規模と言われている。日本でも約 400億円(2013年)、 市場成長率が過去5年間で平均10%、 つまり、現在急成長中の市場である。
世界で最も知られているエナジードリンクは「レッドブル」で、市場占有率は50%。スターバックスも、果物フレーバーとコーヒー豆の新しい製品ライン「リフレッシャーズ」を今年3月に発売した。その他、コカ・コーラ社の「バーン」、アサヒ飲料の「モンスター」なども、まさに戦闘モードの飲料マーケットをターゲットにしている。
かと思えば、ヨーロッパではリトアニアのように未成年者へのエナジードリンクの販売を禁止 する国も現れた。アメリカでも、エナジードリンクとは逆の効果をもたらす“リラックス飲料”を求める人が増えている。「Neuro Bliss(神経の至福)」(http://www.drinkneuro.com/)、「Marley's Mellow Mood(マーリーのリラックス気分)」(http://drinkmarley.com/)、「Just Chill(落ち着け)」(http://drinkjustchill.com/)といった名称で、リラックスするための手段の1つとして販売されている。緊張感や不安感の多い現代社会で暮らすために、過剰な投薬ではなく、こうした“リラックス飲料”を受け入れ始めているようだ。
一方、最近ヒッピーブームの回帰が言われ始めた。月刊誌『VOGUE』3月号の特集は「ハッピーなヒッピースタイル」、なぜ今またヒッピーなのだろうか?
60年代、アメリカがベトナム戦争へと向かう中、社会の戦闘モードに嫌気がさした若者たちが、既成の社会制度や権威に反旗を翻し、「愛と平和と自由」を求めたヒッピームーブメントは、ファッションと共に現代にまで受け継がれてきている。民族を超えて、できる限り現地の人やものと触れ合いその土地の食べ物やファッションに挑戦する旅のスタイルや、無農薬野菜、産地直送、地産池消といったオーガニックブームも、その起源をヒッピースタイルに見ることができる。
経済成長信仰があらゆる争いのもとになっているかのような現代は、「正義なきベトナム戦争」への反対を掲げてドラッグ文化がブームとなった60年代と、たいして変わらない社会的緊張を強いられているのかもしれない。エナジードリンク市場拡大の裏で、リラックス飲料の需要急増という現実。拡大する「正義なき資本主義社会」崩壊の予感は、“脱成長”社会への動きとして、ヒッピー的気分にその兆候が見られることを見逃してはならない。
| 15.04.24