ウルシ
文化庁は2月、国宝や重要文化財の建造物の保存修理に使う「ウルシ(漆)」に、今後国産品を用いることを決めた。国産漆のコスト高や生産量減などにより、現在国産は3割程度で中国産が7割を占めている。06年以降、漆の供給林5か所を保護する政策を打ち出し、一定量確保のメドがたったことを受けての今回の措置のようだ。2018年度までにすべてを国産に切り替えることを目標にしているという。(http://www.yomiuri.co.jp/culture/news/20150311-OYT8T50074.html)
「ウルシ」の英語名は「japan」、磁器は「china」だ。しかし、ウルシは長い間中国から伝わったものだと思われてきた。ところが1984年に福井県の鳥浜貝塚遺跡で出土した漆の枝は、2011年に放射性炭素(C14)年代測定法による分析が行われた結果、世界最古、約12600年前のものであると確認され、またDNA分析で日本の固有種であることも判明した。製品としても、9000年前の北海道函館市の垣ノ島B遺跡で漆塗りの副葬品が発見され、こうした発見から、近年ウルシを見直す動きが起こっている。日本古来のウルシ産地として有名な岩手県二戸市浄法寺地方では、ユネスコ世界遺産の登録に向けて、自治体、地元の組合そして人間国宝作家を交えての運動が活発化している。
2013年、「和食」が、その食文化は自然を尊重する日本人の心を表現したものであり、伝統的な社会慣習として世代を越えて受け継がれていると評価され、無形文化遺産に登録された。それ以降、器として食べ方に関わる漆器が、国内のみならず海外でも注目を集めはじめている。
中国や韓国では汁物を飲む為に伝統的に匙を使ってきたが、日本は匙を使う慣習が無い。これは熱伝導の悪い漆器を使っていたからとも言われている。そして日本では茶碗や汁椀を手に持ち箸を使って食べるようになった。椀に入った熱い汁も椀に唇をつけて啜ることができる。漆器は和食の様式にとっても重要な要素になっているのだ。
日本には、長い独自文化の時代「縄文」が存在していた。天皇家が半島から渡って来て日本を支配してからわずか1250年である。その前の中国大陸からの支配者も数百年を逆のぼるに過ぎない。度重なる弥生時代からの異文化民族による侵略と支配により失われた、それ以前数千年の縄文の文化を、「ウルシ」は秘かに、しかし脈々と現代日本に伝えているのではないだろうか。
| 15.04.17