枯山水
ボードゲーム業界で、日本庭園造りをテーマにしたユニークなゲーム「枯山水」(http://www.newgamesorder.jp/games/stone-garden)が隠れたヒットになっている。税込み8,100円という高価格ながら、その一風変わった世界観が新しい客層を取り込んだようだ。
プレイヤーが禅僧となり、最も美しい枯山水を作った者が勝つという、他にはない奇抜な設定だ。 「座禅」によって稼いだ「徳」ポイントを使うことで好きな形の石を置くことができ、庭師として著名な小堀遠州など歴史上の人物のカードを使うと、タイルをきれいに並べ替えたり特殊効果を得ることもできる。作った庭園の出来栄えはデザインの規則性などで採点され、最も「わびさび」を表現した庭師がゲームに勝利するというものだ。ネット上で、実際にプレーして仕上げた自分の庭園の写真をアップする人も増えて、単なるボードゲームを超えた発展をしている。
ところで、ドイツは世界的に最もボードゲームの盛んな国だ。ドイツ人デザイナーによる年間数百の新たなボードゲームが発売されて、一大産業になっている。ボードゲームという遊びが人々の間に定着し、ひとつの文化として完全に根付いているといえる。他の欧州諸国でも人々のゲームに対する関心は総じて高い。日本でも、双六を始め江戸時代には各地で文化に根ざしたゲームが発達したが、最近ではアナログゲームを題材としたコミック、中道裕大著『放課後さいころ倶楽部』(小学館)が、日本とドイツを共通するゲーム文化で結びつけているのが面白い。ここではボードゲーム好きの女子高生が、誇りをもってボードゲームを創り出すドイツのゲーム文化を知って、小説家や漫画家と同じようにボードゲーム作家に憧れる姿が描かれている。
限られた世界(ボード)の中では、未就学児も九十を超えた老人も同じレベルで競えるように「限界」を定めることで、ゲームも文化の域に達していく。ボードゲーム「枯山水」の人気の秘密は、対象にした枯山水自体が、正に「限界の中の"美"の追求」そのものであるからと言えるだろう。
| 15.02.20