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ホワイトハッカー
米国政府や日本政府をはじめとした先進国が、これまで取り締まっていたハッカーたちを正規に雇いだしている。これを他のハッカーと区別して「ホワイトハッカー」と呼ぶらしい。何を基準に区別しているのだろう?
国際ハッカー競技大会『SECCON CTF 2014』 (http://2014.seccon.jp/finals.html)の決勝戦が、日本で初めて2月7日、8日に行われた。出場したのは、世界58の国と地域から予選を勝ち抜いた技術者や学生など24チーム。結果、1位韓国、2位台湾、3位アメリカで、日本のチームは4位と5位だった。大会後の交流会では、上位の成績を収めたチームに、企業や官公庁の担当者がスカウト攻勢をかける光景が見られたという。ホワイトハッカーのコンテストだからだろうか?
インターネットを基盤としたハッカー集団アノニマスは、「『ISIL』を名乗る連中のウェブサイト、アカウント、メールアドレスを破壊してやる。お前たちには、オンラインで安全な場所はない!」と2月6日に宣戦布告。フランスで起きた風刺新聞シャルリー・エブド襲撃事件をきっかけに、「ISIL」に関係しているとされる800ものツイッターアカウント、12のフェイスブックページ、50のメールアドレスを攻撃し既に崩壊させている。
2010年に「ウィキリークス」が米国の外交文書を大量に公表した際、同社ヘの支援を打ち切った大企業が「不公正」であるとしてそのウェブサイトを攻撃したことで、彼らの活動は反社会的だと広く知られるようになった。彼らは一般的な善悪とは関係なく、独自の価値観によって企業や政府のウェブサイトにサイバー攻撃を加えている。しかし今回、人を殺さずダメージを与える有効な手段を打ち出したことで、西側では「アノニマスは正義の味方」というイメージが強くなりつつあるようだ。そんなに単純だろうか?
インターネットは、自由な対話のプラットフォームであると同時に、権力の監視装置としてもこの上なく有用であるという両面性を持ち合わせている。アノニマスは、かつて日本で国会可決された「違法ダウンロード刑事罰化」についても真っ向から反対し、自民党や財務省、さらには日本音楽著作権協会のサーバーまでもダウンさせるという行為に出た。アノニマスというハッカーの登場は、世界の善悪の基準にも影響を与えつつあるようだ。
一方、政府公認のホワイトハッカーが反骨精神をもぎ取られているとしたら、彼らは一流にはなり得ない!?
| 15.02.27
枯山水
ボードゲーム業界で、日本庭園造りをテーマにしたユニークなゲーム「枯山水」(http://www.newgamesorder.jp/games/stone-garden)が隠れたヒットになっている。税込み8,100円という高価格ながら、その一風変わった世界観が新しい客層を取り込んだようだ。
プレイヤーが禅僧となり、最も美しい枯山水を作った者が勝つという、他にはない奇抜な設定だ。 「座禅」によって稼いだ「徳」ポイントを使うことで好きな形の石を置くことができ、庭師として著名な小堀遠州など歴史上の人物のカードを使うと、タイルをきれいに並べ替えたり特殊効果を得ることもできる。作った庭園の出来栄えはデザインの規則性などで採点され、最も「わびさび」を表現した庭師がゲームに勝利するというものだ。ネット上で、実際にプレーして仕上げた自分の庭園の写真をアップする人も増えて、単なるボードゲームを超えた発展をしている。
ところで、ドイツは世界的に最もボードゲームの盛んな国だ。ドイツ人デザイナーによる年間数百の新たなボードゲームが発売されて、一大産業になっている。ボードゲームという遊びが人々の間に定着し、ひとつの文化として完全に根付いているといえる。他の欧州諸国でも人々のゲームに対する関心は総じて高い。日本でも、双六を始め江戸時代には各地で文化に根ざしたゲームが発達したが、最近ではアナログゲームを題材としたコミック、中道裕大著『放課後さいころ倶楽部』(小学館)が、日本とドイツを共通するゲーム文化で結びつけているのが面白い。ここではボードゲーム好きの女子高生が、誇りをもってボードゲームを創り出すドイツのゲーム文化を知って、小説家や漫画家と同じようにボードゲーム作家に憧れる姿が描かれている。
限られた世界(ボード)の中では、未就学児も九十を超えた老人も同じレベルで競えるように「限界」を定めることで、ゲームも文化の域に達していく。ボードゲーム「枯山水」の人気の秘密は、対象にした枯山水自体が、正に「限界の中の"美"の追求」そのものであるからと言えるだろう。
| 15.02.20
日本人ショコラティエ
1995年から毎年、パリで世界最大のチョコレートの祭典「サロン・デュ・ショコラ」が開かれている。バレンタインデーを前に、日本では「サロン・デュ・ショコラ」日本版(http://www.salon-du-chocolat.jp/)が大盛況だ。1月21日に新宿NSビルからスタートして、京都、大阪、福岡、名古屋、仙台、そして札幌と、2月15日まで全国の百貨店をまわっていく一大イベントになっている。
本場パリの「サロン・デュ・ショコラ」では、ここ数年日本人のショコラティエの活躍が注目されている。昨年は、兵庫県三田市の「パティシエ エス コヤマ」のオーナー小山進氏と、パリに菓子店「パティスリー モリ・ヨシダ」を持つ吉田守秀氏が、出品した約200人のチョコレート職人のうち12人に贈られる最優秀賞を獲得した。また、パティシエの辻口博啓氏が渋谷ヒカリエで手掛ける「ル ショコラ ドゥ アッシュ」は、ショコラ専門店に与えられる最高位の5タブレット金賞を2年連続で受賞した。これは、フランスで最も権威のあるチョコレート愛好家協会「クラブ・デ・クロクール・ド・ショコラ(C.C.C) 」によるショコラ品評会が選ぶものだ。同協会は“チョコレート版ミシュラン”とも呼ばれ、世界的に大きな影響力がある。
日本人は、異文化を吸収しそれを本国人も驚くほど極めるという感性を持っている。欧米で修業をし、丁寧で繊細な職人技で対象物を世界的高レベルまで引き上げる匠の技だ。チョコレート然り、ウイスキー然りだ。
パティシエの辻口博啓氏は、「和を以て世界を制す」をモットーに、和とチョコレートの融合で世界に挑戦するとしている。その反面、国のお墨付きで多額の予算をかけ、「日本の文化」を「クールジャパン」と称して、海外に売り込もうとする官民ファンド「海外需要開拓支援機構(クールジャパン機構)」は、その存在そのものがなぜかクールではない様に感じる。
| 15.02.13
マッチポンプ
2016年度の米国の国防予算案は、緊縮路線を転換し、前年8%増の5,343億ドル(約63兆円)と過去最高になる見込みだ。2001年の同時多発テロ前が2,870億ドルだから、何と911以降15年で倍増したに近い。
オバマ大統領は、財政赤字を減らすために国防費を削減する傾向にあったが、「イスラム国」への対応と、ウクライナ情勢をはじめとしたロシアへの対抗などを目的に、国防費を大幅に増額せざるを得ない状況になった。
遡って2003年、ブッシュジュニアは大量破壊兵器を隠しているとして無理やりイラク侵攻を行った。結局大量破壊兵器など見つからなかったのだが、その際最大の利益をあげたのは、チェイニー元副大統領がCEOを務めていたハリバートン社(http://www.halliburton.com/)で、およそ400億ドルの巨利をむさぼったといわれている。米軍需産業はいまや世界の武器市場の75%を占めており、中東はその最大マーケットである。アメリカの経済は、今も昔も戦争なしでは成り立たないようになっているのだ。
今回、「イスラム国」に拘束された二人の日本人が殺害されるという最悪の事態は、「第二の911」と言われたりもしているが、安倍首相の「この道しかない」発言と「イスラム国を決して許さない」発言は、当時のブッシュ大統領を連想させる。しかし、大統領の「対テロ戦争」宣言以降、テロ組織はなくなるどころか数も規模も拡大し、アメリカ市民は日常的にテロに怯える生活を強いられている。日本も同じ道をたどることになるのだろう。
複雑な中東情勢を、東西冷戦時代の世界と同じ単純構造でしか把握せず、「経済も、外交・安全保障も、この道しかない」と言い切って対米追従する安倍政権は、武器輸出三原則も既に変更し、日本のハリバートンに利益をむさぼらせていく。戦争が武器を生むのか?武器産業が戦争を生むのか?「マッチポンプ」とは、正に軍需産業のためにある言葉だ。
| 15.02.06