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後妻業

「小説が事件を予言していた!」と、文芸春秋が緊急リリースを出して注目された黒川博行著『後妻業』。事件とは、いま世間を騒がせている「京都・夫青酸死事件」だ。
本書を読むと、たしかに今回の連続不審死事件と非常に似通っている。実際の不審死事件は、容疑者の女性(67歳)が京都や大阪の結婚相談所を介して男性(71~75歳)と知り合い、結婚後、または交際中、短期間の間に相手の男性6人が次々と死亡し、その結果得た遺産などが8億円に上るといわれているものだ。
一方、黒川博行の『後妻業』も大阪の結婚相談所を舞台に、高齢女性(69歳)がそこで知り合った高齢男性(90歳)らと結婚。夫に財産遺贈の公正証書作成を持ちかけ、死別を繰り返すという設定が、事件の内容と酷似しているのだ。そのためネット上では、「あまりにタイムリー」、「まんまやん」といった驚きの声や、「もしやウチも?」といった読者のリアルな書き込みが相次いでいる。
黒川氏は、小説は知人の体験をヒントにしたフィクションだが、実際にも似たような隠れた事件はたくさんあり、高齢化する日本で、この種の事件は今後増えていくと語る。小説の中で、被害者の娘から相談を受けた弁護士が、「後妻業やね。最近、事例が増えてきた」と教えるシーンがあるが、「後妻業」なる言葉は、法曹関係者らの間では既に業界用語になっているという。
これらの事件で、残された人々にしてみると財産を奪う「後妻業」の女性は悪魔のような存在だが、逝ってしまった男性から見るとどうなのだろう?ひょっとすると幸せな気持ちで極楽死しているかもしれないと、ふと思う。妻と死別した後、妻には期待できなかった極上のサービスをしてもらい知らぬうちに死なせてくれる。悪い話ではなかったかもしれない。「後妻業」は、安楽死請負業とも解釈できるのではないだろうか。現在の日本の満たされない高齢社会には、「後妻業」の充分なマーケットが存在するのかもしれない。日本で安楽死が認められていないことも、これらのビジネスを支える一因になっているのだろうか。
誰でも美しく死にたい、苦しまずに死にたいと願うが、教養があればあるほどそう思うのだろうか。男の理想は、高倉健のような死に方かもしれない。NHKスペシャル「高倉健という生き方~最後の密着映像100時間~」の中の高倉健はあまりにも美しい。2年後に病で死ぬ姿ではない。

| 14.12.05

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