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祭日/祝日
大日本帝国憲法下の明治6年に定められた祭日は、すべて皇室の宗教祭祀儀礼の日とされる「祭日」だった。そのうち「孝明天皇祭」「神武天皇祭」「天長節(明治天皇誕生日)」は天皇そのものを祭祀の対象とした。明治政府は、天皇を神々と国民との間にある特別な存在として位置付け、民衆もそれにならって共に祭祀の儀礼を行うことを通じて次第に両者の間で宗教的な序列が形成されていき、天皇自体も祀りの対象としたことにより神格化され、その存在が国民の精神的な拠りどころとなっていった。祝祭日における、このような儀礼を通じた国民意識の結集により国家主義は次第に強固なものとなっていったが、同時に江戸時代までの「八百万の神々信仰」は完全に払拭され、祝日はそれまでの庶民的行事としての色彩を失っていったと言われている。
ひるがえって米国占領下で日本国憲法のもと1948年7月に定められた「国民の祝日に関する法律」の第1条では、「よりよき社会、より豊かな生活を築きあげるために、祝い、感謝し、記念する日を定める」という内容がうたわれている。しかし、新たに制定された「国民の祝日に関する法律」には、「祭日」という言葉は表記されていない。
そういえば昭和の天皇の時、天皇誕生日は4月29日だった。今は「昭和の日」である。また、11月3日「文化の日」はもともと、明治天皇の誕生日だった。
敗戦後一時アメリカ及び連合国の占領下に置かれた日本が、本当に終戦を迎えたのはサンフランシスコ講和条約が締結された1951年9月8日だった。一般の国々の場合は独立記念日に当たるが、日本ではいろいろあって敢えて普通の日にしている。その一方で、2016年8月11日には、新しく祝日「山の日?」が始まる。
そのような中、平成天皇が即位以来、12月23日は天皇誕生日で祝日となり、クリスマスイブと合わせて国民にとってありがたい日になったと感じる人が増えている。今年は年末までアベノミクス選挙で忙殺され、12月23日はチョット休めるクリスマスイブ前日とあって、街の雰囲気は完全にクリスマス一色に染まった。そうした中では23日に天皇誕生日を意識した人は少ない。日本の首相と日本人にとってもはや天皇とキリストは同次元なのかもしれない。
国父は誰なのだろう?
| 14.12.26
寿命計算アプリ
簡単な質問に答えるだけで推定死亡年月日がわかる寿命計算アプリ「Deadline.」(https://itunes.apple.com/us/app/deadline./id917475404?mt=8)が米国で話題になっている。「Deadline.」はiOS 8を使用し、生命保険会社が加入者の余命を計算するのと同じ方法で寿命の計算ができるアプリだ。入力する情報は、生年月日、身長、体重、食事習慣、喫煙、飲酒、両親の現状、運動量、運転、ストレスレベルの10項目で、答えを入力すると残りの寿命がタイマーで表示されるという具合だ。スマートフォンのディスプレイ上に、死ぬまでにあと○年と○カ月と○日と○時間、と表示されカウントダウンが開始する。深刻ではないものの心が落ち着かなくなり、不安がかき立てられてしまう。しかし飲酒や運動項目の回答を微調整すると、簡単に90歳以上に寿命は延びる。今から定年を迎えようとする50代の人々は、現在の平均年齢の80~85歳を大幅に超えて生きられることになる。
日本のサラリーマンの場合、55歳役職定年、60歳定年、60~65歳は定年再雇用という人事運用を多くの企業が採用している。厚生年金の支給開始年齢が65歳とされている中、そこまで何とか収入をつなごうとしているだけだ。ポイントは国富の蓄積の為にいくつまで貢献できるか?であり、まだ能力があって楽しみながら働きたい人をサッサとリタイヤさせてしまうのは、国の負担を増やすだけの愚行であることに気が付かないことだ。現行、65歳以上でかつ収入が一定以下に下がった場合のみ年金を出す??としている。しかし、年金は年金。いくら稼いでいようと出すべきだろう。現役で年金をもらいながら厚生年金は収めるというようにすれば、定年なんか関係なくなる。年金をもらうためにリタイヤしてしまう“若い”65歳以上がいかに多いかを考えた方がいい。
一方、今回の衆院選、自民党の一番若い当選議員は鈴木貴子氏28歳で、最年長は76歳の伊吹文明氏。当選者の党別平均年齢は、自民53.7歳、民主52.4歳、維新47.8歳、公明53.1歳、全当選者平均では53歳だったそうだ。議員定年は、自民党は73歳(参議院は70歳)、公明党は在任中66歳、民主党は候補公認新人60歳未満、前・元職65歳未満。しかし、皮肉なことに若く見せようと定年を下げた?民主党と、73歳の自民党の当選議員の平均年齢はほとんど変わらなかった。
国富の再配分の視点から考えれば人口は少ないほど良く、年金制度を支える労働人口は多いほど良いことになる。現在の日本の場合、90歳までの国民の創造的生産活動を支えることが先進国としての役割ではないだろうか。
目先の理由でいたずらに人口を増やそうとしてはいけない。100年後の負担を増やすだけだ。
| 14.12.19
妖怪セラピー
グッズを発売すれば即完売、限定ショップを開店すればグッズが売れすぎて予定よりも早く閉店してしまうなど、第2のポケモンの呼び声も高いアニメ「妖怪ウォッチ」。今年1月にTV番組が始まると大人気になり、10月からは韓国でもアニメ放送がスタート、12月からはウォッチとメダルも発売になる。今後アジア各国でも展開が見込まれているそうだ。
ストーリーは、小学5年の主人公ケータが「不思議な時計(妖怪ウォッチ)」を手に入れてから妖怪が見えるようになり、その妖怪と友達になっていくというもの。「日常の不思議な出来事はすべて妖怪のしわざ」というのが、物語のカギでありコンセプトになっている。 寝坊したのは妖怪のせい、 あの子にフラれたのは妖怪のせい、 ピーマンが食べられたのは妖怪のせい、 ウンチが臭いのは妖怪のせい、 学校でトイレに行きたくなる気持ちは“モレゾウ”という妖怪に取りつかれているから?と、なんでも誰かのせいにする。悩みがそのまま妖怪になり、ダジャレ要素でネーミングされるのが面白い。
一方、悩みを妖怪のせいにするというセラピーの手法があるそうだ。妖怪が信じられていた時代のストレスマネジメント手法を利用する「妖怪セラピー」、自分がかかえている問題を妖怪に託して外在化し、自分を責めずに本人と切り離すという療法だ。語り継がれてきた「かっぱ」や「あずきあらい」など、子供の頃は不思議さに心をわくわくさせて想像力をふくらませ、嬉々として語り合う反面恐ろしい存在でもあった。そうした妖怪について語ることで心のすき間を埋めてきた、その“効用”を利用しようというものらしい。あえて妖怪を媒介にすることで妙な深刻さから逃れられる。「妖怪ウォッチ」が子供の心をつかんだのも、まさに妖怪のしわざにして解決するストーリーに癒され強い共感性が生まれるからだ。
思えば日本人は昔から、人の力でどうにもならない病気や天災を妖怪や神様のせいにしてきた。いくら働いても豊かにならないのは「貧乏神」のせい、水害は「竜神様」が怒ったから、飢饉は「山神様」の怒り、気の病は「狐憑き」だ。問題の主を祀り、解決法はみんなで祈ってきたところがあった。今回の選挙で、効果がよくわからない「アベノミクス」を祀り皆で拝んで雨乞いをするのも、「妖怪セラピー」なのだろうか?
| 14.12.12
後妻業
「小説が事件を予言していた!」と、文芸春秋が緊急リリースを出して注目された黒川博行著『後妻業』。事件とは、いま世間を騒がせている「京都・夫青酸死事件」だ。
本書を読むと、たしかに今回の連続不審死事件と非常に似通っている。実際の不審死事件は、容疑者の女性(67歳)が京都や大阪の結婚相談所を介して男性(71~75歳)と知り合い、結婚後、または交際中、短期間の間に相手の男性6人が次々と死亡し、その結果得た遺産などが8億円に上るといわれているものだ。
一方、黒川博行の『後妻業』も大阪の結婚相談所を舞台に、高齢女性(69歳)がそこで知り合った高齢男性(90歳)らと結婚。夫に財産遺贈の公正証書作成を持ちかけ、死別を繰り返すという設定が、事件の内容と酷似しているのだ。そのためネット上では、「あまりにタイムリー」、「まんまやん」といった驚きの声や、「もしやウチも?」といった読者のリアルな書き込みが相次いでいる。
黒川氏は、小説は知人の体験をヒントにしたフィクションだが、実際にも似たような隠れた事件はたくさんあり、高齢化する日本で、この種の事件は今後増えていくと語る。小説の中で、被害者の娘から相談を受けた弁護士が、「後妻業やね。最近、事例が増えてきた」と教えるシーンがあるが、「後妻業」なる言葉は、法曹関係者らの間では既に業界用語になっているという。
これらの事件で、残された人々にしてみると財産を奪う「後妻業」の女性は悪魔のような存在だが、逝ってしまった男性から見るとどうなのだろう?ひょっとすると幸せな気持ちで極楽死しているかもしれないと、ふと思う。妻と死別した後、妻には期待できなかった極上のサービスをしてもらい知らぬうちに死なせてくれる。悪い話ではなかったかもしれない。「後妻業」は、安楽死請負業とも解釈できるのではないだろうか。現在の日本の満たされない高齢社会には、「後妻業」の充分なマーケットが存在するのかもしれない。日本で安楽死が認められていないことも、これらのビジネスを支える一因になっているのだろうか。
誰でも美しく死にたい、苦しまずに死にたいと願うが、教養があればあるほどそう思うのだろうか。男の理想は、高倉健のような死に方かもしれない。NHKスペシャル「高倉健という生き方~最後の密着映像100時間~」の中の高倉健はあまりにも美しい。2年後に病で死ぬ姿ではない。
| 14.12.05