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名人貧乏

NHKの朝の連続テレビ小説『マッサン』がスタートした。「日本のウイスキーの父」と呼ばれたニッカウヰスキーの創業者、竹鶴 政孝とその妻リタをモデルとした国産ウイスキー創出秘話だ。同じく国産ウイスキーの黎明期を競い合った現サントリーの創業者・鳥井信治郎(作中は鴨居欣次郎)との出会いが物語中盤を彩っている。
当時の国産ウイスキーの創出者達の努力のお蔭で、日本製ウイスキーは海外でも高く評価され、英国の専門誌『ウイスキーマガジン』が2001年に初めて行ったコンテスト「ベスト・オブ・ザ・ベスト」で、ニッカウヰスキーの「シングルカスク余市10年」が総合1位、サントリーの「響21年」が2位と、日本勢がトップを独占したことは記憶に新しい。コンテストは同誌が世界各地から選んだ47のウイスキーを、英国、米国、日本の専門家62人がブラインドで審査。本場スコットランドの名だたるスコッチウイスキーを抑えて、日本のウイスキーが“世界最高峰”と位置づけられたのだ。それ以前から日本ウイスキーには欧米のファンも多かったが、以降は常に日本のウイスキーが上位に選ばれ、2014年も「ニッカ 竹鶴17年」がワールド ベスト ブレンデッドモルトに輝いている。世界的にも蒸留酒市場は拡大しており、評価の高い日本のウイスキーがマーケットを創造しているとも言える。
一方、今年2月に発表された『Michelin Red Guide 2014 France』では、合計20人の日本人シェフが本場フランスで星を獲得し、ここ数年増加傾向にある。平松宏之シェフは1970年代に何の情報もない中でフランスへと渡り、下積みから30年近いキャリアを重ねて、2002年に日本人として初めて一つ星を獲得した。以来10年あまりの間に多くの在仏日本人シェフが、「日本人が作るフランス料理への信頼」というベースをつくり上げた功績は大きい。今や、日本人シェフやパティシエがいなくなったらヨーロッパのレストラン業界は成り立たないと言われるまでになったのだ。
日本人は外来の文化を受け入れる“名人”だ。どう受け入れれば外来文化をその国の人以上に理解することができ、同時に自分たちの文化をよく生かすことができるのか?——人々はそのための独自の手法を熟練させ完成させてきた。異文化受容と普及の名人と言える。これを「日本化」とするならば、日本化の働きは消費文明の拡大に貢献し、さらなる発展への道を導き出していく不思議な力があると言える。「ドイツ人が基本技術を創り出し、イタリア人が商品に美を与え、日本人がユーザビリティの開発により万民に利用価値を与える」とはよく言われることだが、その価値を狙うユダヤ系金融資本が最後に利益を得る!?そうした連鎖で名人貧乏に終わらないよう考える賢明さも必要だろう。

| 14.10.03

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