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脱力キャラ

サンリオの人気キャラクター『ぐでたま』が、2013年の誕生以来じわじわ人気を集めている。
やる気の無い脱力系卵キャラで、常に「ぐでぐで」しているのが特徴。しかしどこか憎めないキャラだ。
『ぐでたま』は、「めんどくせぇ…」「明日から本気出す」-。いつもぐでぐでとだらしない格好で卵がつぶやくもので、「かわいい」キャラのサンリオらしからぬネガティブさが注目され、公式ツイッターのフォロワーは20万人を突破している。発案したのは、入社3年目の同社デザイナーだ。「ある日、卵かけご飯を食べようとして、卵って全然こっち向かないし、やる気ないなってふと感じた。調理法もいろいろあるし、栄養もあるのに『どうせ食べられるだけだし』と思っていそうだなと思ったのが、きっかけだそうだ。その印象は「良い学校を出て、何でもできるはずなのに、『どうせ…』とあきらめている今の人たちの姿と重なった」と話す。
TBS「あさチャン!」では、ショートアニメなどが放映され、8月末に刊行された絵本『ぐでたま哲学』(大和書房)は5万部超と好調のようだ。
また、『リラックマ』」や『たれぱんだ』、『まめゴマ』などを生み出したサンエックスの最近はやりのキャラクターが、『すみっコぐらし』。ゆるくてかわいいと、あのリラックマを超えたという噂もあるほどだ。電車に乗ればすみっこの席から埋まり、カフェに行ってもできるだけすみっこの席を確保したい…すみっこにいるとなぜか“落ち着く”という気持ちをテーマにしたキャラクターで、さむがりやの“しろくま”や、自信がない“ぺんぎん”、食べ残しの“とんかつ”など、ちょっぴりネガティブだけど個性豊かな性格のキャラクター達が登場している。部屋の隅に固まっているという特徴が、謙虚、控えめ、主張しないという最近の日本の若者にぴったり当てはまり、共感を集めているのかもしれない。このネガティブ現象は、人とキャラクターとの関係性から生み出される“癒やし”効果だけが理由ではなさそうだ。
成熟社会では8割の人は頑張らなくても、社会は回るようにできているそうだ。頑張るのは2割の人だけでいい。それでも日本の人口からすると2500万人にもなるのだから・・・と言う事なのだろう。誰もが頑張る社会だった日本が、多様な価値観を否定しない社会に変わり始めていることの現れは、一方で年金の崩壊は加速している。

| 14.10.31

日本暮らし

関西国際空港を2014年上期に利用した外国人旅客数が前年同期比31%増の約321万人と過去最高となり、1994年の開港以来初めて日本人旅客数(約317万人)を上回ったとして、話題になっている。格安航空会社(LCC)の就航増加や、円安、ビザの発給要件の緩和を受けて、アジアを中心に観光客が増えたためと見られている。今年9月までの外国人旅行者数は1000万人に迫り年間で1300万人を超える見込みで、訪日外国人数はこの10年でほぼ倍増した。
世界的にみると、最大の観光国・フランスへの外国人旅行者数は8301万人と群を抜いており、2位は米国の6696万人、3位は中国の5772万人、4位がスペインの5770万人、5位がイタリアの4636万人…の順(「世界観光ランキング2012」)で、日本は「観光先進国」の仲間入りにはほど遠い。その分まだまだ伸びしろがあるとも言える。また、視点を変えると、これらの数字はビジネスなどでの入国を含む人数である上、陸続きでない日本の場合ほぼ全員が空路からの入国となる訳で、1000万人超えは悪くない数字とも言える。空路しかない国や地域と比較してみると、オーストラリアが612万人、ハワイは米本土からの旅行者も含め784万人だ。
そうした中、米旅行専門誌『Travel + Leisure』(http://www.travelandleisure.com/)が実施した読者投票「ワールド・ベスト・アワード2014」で、京都が1位に躍り出た。投票に参加する読者は文化や芸術、価格など複数の要因を考慮して魅力的な旅行先かどうかを判断する。ちなみに昨年のランキングでは京都が4位、トップはタイのバンコクだった。同誌は京都について、桜や寺院、庭園ばかりでなく、それ以外の魅力もあると指摘、中でも他の国にはない“町家”をその一つとして注目しているようだ。
また2009年に発行された日本に関する旅行ガイド『Michelin Green Guide Japan』(http://www.michelintravel.com/shop/japan-green-guide/)に続き、2011年の改訂版でも、飛騨高山が「わざわざ旅行する価値がある」三つ星の評価を得ている。日本の都市でほかに三つ星を得たのは東京、京都、奈良、日光だけ。大阪、金沢、倉敷、長崎は二つ星、函館、弘前、神戸、萩は一つ星という格付けを見ても、高山の高評価が際立っている。外国人が歴史的日本住居に暮らし続ける生活文化に興味を持っていることを示している。
外国人観光客については、ステレオタイプのジャパンツーリズムではなく、日本の伝統的地方暮らしそのものに目が向いていることを見逃してはならない。世界が固有の文化を相互に交換しあう時代になった今、観光は最終的には国ではなくその拠点となる都市・地域文化間の戦いだ。グローバル化が行き過ぎると、観光の意味がなくなるというパラドックスは面白い!

| 14.10.24

御朱(集)印

霊的な力が満ちているとされる「パワースポット」の御朱印を集めて回る若い「御朱(集)印ガール」がひそかに増えているそうだ。『日本全国この御朱印が凄い!』(ダイヤモンド・ビッグ社 http://www.diamond.co.jp/arukikata/9784478044704.html)によると、御朱印は、個性あふれる筆づかいや押し印のデザイン性などからアートとしての側面も持っている。同じ寺社でも書き手によって筆跡や押し印の濃淡が異なり、御朱印のデザインも変わる。また、日本の寺社固有のものとして、御朱印の芸術性は広く海外にも知られている。
実際10年前に比べると、多くの寺社で御朱印を求める女性が5~10倍に増えているそうだ。神社自らがおおっぴらに販売したり広告したりはしていないが、参拝者を増やす絶好のきっかけにもなっているという。その一方で、御朱印をスタンプラリーのように扱うべきではないとして、特に他宗派、他宗教のものと混ぜているものには御朱印を発行しないと、ポリシーを貫く寺社も少なくないようだ。
御朱印は本来、参拝者が写経をお寺に納めた際にもらえる「お印」だったが、一説によると江戸時代後期頃から納経しなくてももらえる参拝のあかしとなり、やがて神社にも広がり、今では多くの寺社でもらえるようになったのだそうだ。キリスト教でも巡礼証明のスタンプが発行されるなど似たようなものがあるが、神仏や寺社名が書かれ、御本尊や御神体(ごしんたい)の分身として扱われる御朱印は日本独自のものだ。ただの観光で神社やお寺に行く人が、記念として宗派も気にせず各神社・寺院の御朱印を集めるのは、無節操ではあるが、それが今や楽しく魅力的なコレクションになっているようだ。
多くの日本人は自らを“無宗教”と言うことが多い。しかし宗教そのものに馴染みが薄くても、御朱印がイメージする“宗教のようなこと”に親しむことに精神的な価値を見出すのは日本人独特の宗教観だ。世界中の多くの紛争が宗教戦争であることを考えると、宗派を気にせず宗教的ご神体をコレクションしたり、クリスマスを祝ったりすることに何の抵抗もない日本人の「御集印」人気は、無節操と言える反面何とも穏やかで貴重な世界平和への貢献になっている!?

| 14.10.17

ノームコア

雑誌『ニューヨーク・マガジン』(http://nymag.com/)が、今年の上半期に次なるファッショントレンドとして紹介した「ノームコア(Normcore)」が話題になっている。
「ノームコア(Normcore)」は、ノーマル(Normal)とハードコア(Hardcore)を組み合わせた造語だ。ファッション界では、1990年代に「ストリート」、2000年代初頭に「セレブカジュアル」、後半は「ラグジュアリーモード」など、その時代に注目されたファッションスタイルを言い表すことばが誕生してきた。しかし、近年新しい用語が生まれてこなかったため、「普通のファッションがトレンド」と主張するアメリカ発の「ノームコア」ということばに多くの人が飛びついたようだ。
「ノームコア」の定義は「周囲の人と調和して、個を主張しない服装」で、さらに「流行やブランドから距離を置く、地味でベーシックなファッション」という意味も持っているとしている。アイテム的やスタイリング的に目新しいものはなく、そういう「新しさ」の逆を行こうとしているのが「ノームコア」だ。夏の代表的コーディネートは、薄色デニムや上下セットアップ、ソックス&サンダル、スウェット&つっかけ、スニーカー、バックパックといったカジュアルなものだ。しかし、シンプル且つ上質な素材にこだわり、自分のアイデンティティーと合致させることがポイントになっている。
「ノームコア」のスタイルアイコンは、どうもアップルのスティーブ・ジョブズらしい。彼は新製品発表会でいつもイッセイミヤケの黒いタートルネックにボトムはブルージーンズで、タートルの裾をジーンズに入れ足元はグレーのニューバランスのスニーカーだった。彼の「自分のスタイルを貫く姿勢」に共感する人は多く、IT業界のトップがこぞってこのシンプル&カジュアルなスタイルを真似していることが流行の基になっている。ジョブスは新製品で世界中を夢中にさせておきながら、自分は流行を取り入れて外見で個を主張することに飽き、反抗していたのかもしれない。
アメリカは今、金融緩和で見かけ上の経済指数は良いが軍事力でかつての勢いはなく、株価は上がれど消費は落ち込み、失業率は見かけ倒しで、結果オバマの人気はガタ落ちだ。また、アメリカ人は自分の国が世界で突出した存在であろうとする外交姿勢に孤独を感じているようにも見える。他人とは違うという個性の主張などほんとうに必要なのだろうか? それよりも「シェア」の時代、大勢の中に紛れ同じ目線で多くの人々とつながりながら、実は質にこだわることのほうが幸せなのではないか?と感じ始めているように見える。「ノームコア」は、成功したアメリカ人の心情を表す、日本の「ワビサビ」にも似たスタイルと言えるのかもしれない。

| 14.10.10

名人貧乏

NHKの朝の連続テレビ小説『マッサン』がスタートした。「日本のウイスキーの父」と呼ばれたニッカウヰスキーの創業者、竹鶴 政孝とその妻リタをモデルとした国産ウイスキー創出秘話だ。同じく国産ウイスキーの黎明期を競い合った現サントリーの創業者・鳥井信治郎(作中は鴨居欣次郎)との出会いが物語中盤を彩っている。
当時の国産ウイスキーの創出者達の努力のお蔭で、日本製ウイスキーは海外でも高く評価され、英国の専門誌『ウイスキーマガジン』が2001年に初めて行ったコンテスト「ベスト・オブ・ザ・ベスト」で、ニッカウヰスキーの「シングルカスク余市10年」が総合1位、サントリーの「響21年」が2位と、日本勢がトップを独占したことは記憶に新しい。コンテストは同誌が世界各地から選んだ47のウイスキーを、英国、米国、日本の専門家62人がブラインドで審査。本場スコットランドの名だたるスコッチウイスキーを抑えて、日本のウイスキーが“世界最高峰”と位置づけられたのだ。それ以前から日本ウイスキーには欧米のファンも多かったが、以降は常に日本のウイスキーが上位に選ばれ、2014年も「ニッカ 竹鶴17年」がワールド ベスト ブレンデッドモルトに輝いている。世界的にも蒸留酒市場は拡大しており、評価の高い日本のウイスキーがマーケットを創造しているとも言える。
一方、今年2月に発表された『Michelin Red Guide 2014 France』では、合計20人の日本人シェフが本場フランスで星を獲得し、ここ数年増加傾向にある。平松宏之シェフは1970年代に何の情報もない中でフランスへと渡り、下積みから30年近いキャリアを重ねて、2002年に日本人として初めて一つ星を獲得した。以来10年あまりの間に多くの在仏日本人シェフが、「日本人が作るフランス料理への信頼」というベースをつくり上げた功績は大きい。今や、日本人シェフやパティシエがいなくなったらヨーロッパのレストラン業界は成り立たないと言われるまでになったのだ。
日本人は外来の文化を受け入れる“名人”だ。どう受け入れれば外来文化をその国の人以上に理解することができ、同時に自分たちの文化をよく生かすことができるのか?——人々はそのための独自の手法を熟練させ完成させてきた。異文化受容と普及の名人と言える。これを「日本化」とするならば、日本化の働きは消費文明の拡大に貢献し、さらなる発展への道を導き出していく不思議な力があると言える。「ドイツ人が基本技術を創り出し、イタリア人が商品に美を与え、日本人がユーザビリティの開発により万民に利用価値を与える」とはよく言われることだが、その価値を狙うユダヤ系金融資本が最後に利益を得る!?そうした連鎖で名人貧乏に終わらないよう考える賢明さも必要だろう。

| 14.10.03

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