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EXILE一族
8月20日に「EXILE TRIBE」のドームツアー用キックオフシングル『THE REVOLUTION』がリリースされた。初動32.2万枚を売り上げ、2014年9月1日付のオリコンシングルランキングで初登場1位を獲得した。しかしあまり感動がないのは予定調和的に作られた成功だからなのか?
「EXILE TRIBE」は、新メンバー5名が加入して19人体制となった新生EXILEを中心に、弟分の三代目J Soul BrothersやTHE SECOND、GENERATIONSなどのメンバーが合体した、ボーカル7名&パフォーマー19名の総勢26名という大所帯だ。『THE REVOLUTION』は「新たなエンターテインメントの革命」がテーマとなっており、これまでのEXILEの歴史や既成概念といった古いものを破壊しながら、新しいエンターテイメントを創造していくという進化に果敢に挑戦する男達の、荒々しくも力強いメッセージを表現しているのだという…。でも感動が少ない、なぜだろう?
最近の「EXILE TRIBE = EXILE一族」を名乗る展開は、政党活動にも似た増殖モデルの実践である。東京、大阪、沖縄など全国9箇所、そして台北もあわせた世界10箇所で運営しているダンス&ボーカルスクールを通じて、EXILE一族はこの先数百人規模でさらなる下部組織の増殖を果たしていくと言い、ヒエラルキーとレイアー作りに余念がない。
単なる音楽グループから「族」へと拡大を図り、アーティストとしてのデビューではなくEXILE一族になることをめざし、さらには海外進出プロジェクトも密かに進行しているそうだ。何か所属するレコード会社エイベックスのビジネスの仕掛けが先行して、音楽は二の次になっているのではないだろうか?日本のアーティストが軒並み海外進出に失敗する中、EXILE一族はこの手法により創価学会や極真流にも似た組織作りで成功するのか。AKB48もJKT48と総選挙という手法を使いイスラム社会にまで浸透した。しかし、組織のヒエラルキーを“族”として拡大させるEXILEの方法は、数字的には成功しても「族」の外には感動が伝わらないかもしれない。いや、今やレコード会社ではなく単なる広告代理店と化してしまったエイベックスは、その感動は伝わらなくても良いとしているのだろうか?かつて、バリ島の水耕組織スバックを模した組織づくりを進めた実験音楽集団、「芸能山城組」という挑戦があったことを思い出させる。
音楽はアーティストと聴衆というレイアー無しの広がりで感動を生む。宗教も音楽も人々に希望と感動を与え、本来は平和に貢献するはず。将来、宗教と同じように“族”同士のぶつかり合いにならないことを祈りたい。しかし、そこまで行けば感動はなくともビジネスとしては成功ということになるのだろうか?
| 14.08.29
変身メイク
タレントの板野友美のそっくりさんこと“ざわちん”は、ローラ、奈々緒、きゃりーぱみゅぱみゅ、安室奈美恵、篠田麻里子、大島優子などに変身するメイクを行うことで知られている。ブログ「ざわちんofficial blog」(http://ameblo.jp/zawachin/) にその変身メイクをアップ、1日のアクセス数100万以上を記録して話題を集めている。今月発売中の女性ファッション誌『SCawaii!』(主婦の友社)9月号は、彼女が完全にコケイジョンフェイスに変身してミランダ・カー風のメイクで表紙を飾っている。
どうして今、ざわちんの変身メイクが人気なのだろう?同誌のメイン特集は「女の子は誰でも可愛くなれる!変身願望叶えます!」である。“変身”を日常的に使いこなしているざわちんが、ファッション誌史上初めて“ものまねメイク”で表紙に起用されたのだ。誌面では、ミランダ・カーに加えEXILE・TAKAHIRO風メイクも披露されており、サマンサタバサのCMで共演している二人を一人二役で再現している。ざわちんのメイクにはなりたい人に変身できるという魅力があり、プロのメイクにはない斬新な考え方がある。あきらめずになりたい自分になろうと努力し続ける彼女の姿勢が、読者の共感を呼んでいるのだろう。
一方ここ数年、YouTubeやニコニコ動画で人気を集めている “メイク動画”がある。メイクの技術を学びたいという女性や、化粧するという女性の禁断の日常を見たい男性など、男女双方から人気があるという。中でも普通の会社員だった佐々木あさひの“メイク動画”はすごい人気だ。ストーリー仕立てになっており、スプーンを使ってアイラインを引いたりまつげをカールさせるなど、独特のメイク術が注目を集めている。今や「メークアップパフォーマー」として立派なタレントだ。YouTubeに投稿された彼女の動画は150本以上、再生回数は1700万回を超え、世界中から反響が寄せられるなど、コンテンツメーカーとしてすでに一流の域に達している。
人には誰しも変身願望がある。現代人にとって、「別人になってみたい」という変身願望の実現は、自己解放に役立ち、大いなるストレス解消にもなっているようだ。しかし、メイクは何にでも変身できることがミソで、整形してしまったら選択肢はなくなってしまう。その意味で「変身メイク」は半島で人気の整形とは違い、歴史的にも地勢学的にも究極の混血と言われる日本人らしい、多様性をもった選択なのだろう。
| 14.08.22
「自分を見る」メガネ
アイウエアブランドのJINSが、まばたき、視線の動きなどから自分の疲れ具合や眠気の強さなどを知ることができる「自分を見る」メガネ(https://www.jins-jp.com/jinsmeme/)を発表した。このようなITガジェットが、家電メーカーでも光学機器メーカーでもなく、メガネメーカーから発売されることで話題になっている。鼻パッドなどにセンサーがあり、所持するスマートフォンなどにデータを転送する、新たなウエアラブルコンピューターの登場だ。
目の動きは脳と連動しているため、ここで集めたデータは集中度などを測る指標となる。そこで、東北大や芝浦工業大と協力し、メガネの鼻パッドと眉間(みけん)部分に仕込むセンサーを開発。眼球の手前側と奥でかすかに異なる電位差から目の動きを調べ、無線通信でスマホやパソコンに送られるデータから装着者がどのような状態で物を見ているかを解析できるという。
まずはメガネをかけた際の瞬きの回数や速度あるいは眼球の動きから、「疲れ」と「眠気」を可視化することに成功している。それによって自動車の運転時の眠気をモニターし、警報を出して居眠り運転を防いだりすることもできるという。さらにその人の眠くなっていくパターンを抽出できれば、そのパターンに近づいた時、「そろそろあなたは眠くなります」と、未来の自分の状態を予告することも可能になる。また、フレームには頭の動きを測るセンサーもあり、運動中の姿勢や歩数、消費カロリーまで測ることができるという。
これまでウエアラブルコンピューターといえば、カメラなど本来身につけられなかった装置をいかにして身につけるかを志向していた。パソコンやスマホの操作をハンズフリーにするとか、カメラやパソコンを単に纏うことに注力していた。それは、アメリカ人科学者のVannevar Bush氏が『As We May Think』という論文で示した「メメックス」(Memory Extender)と呼ばれる装置の影響が根強く、研究者たちがそこから逃れられなかったからだろう。しかし、このJINSの「自分を見る」メガネは、機械の方から人に寄り添ってくるという、まったく逆のアプローチをしているところが新しい。
眼の動きは個人個人でその特徴が違うので、「自分を見る」メガネで取るデータはあくまでも自分だけのパーソナライズされたものだ。目は口ほどに物を言うというが、脳の出先機関である目の動きのデータを継続的に見ていくことにより、これまで気づかなかった“自分”を客観的に見ることにもなるのも面白い。
鏡が物理的に自分の外観を客観視させるとすれば、「自分を見る」メガネは、自分の脳の動きを客観視させる画期的なものだ。
| 14.08.08
自国監督
2018年W杯ロシア大会を目指す日本代表の新監督に、メキシコ人のハビエル・アギーレ氏(55)の就任が発表された。
ザッケロー二前監督は選手としても監督としてもW杯の経験がなかったが、アギーレ氏は、主力選手として1986年W杯メキシコ大会に出場し8強進出。監督としてはメキシコのクラブを経た後に、母国の代表を率いてW杯に2度出場。2002年日韓大会、2010年南アフリカ大会で16強入りした、W杯を知り尽くした人物として期待されているようだ。
しかし、過去19大会すべてにおいて、W杯に優勝する国は自国人の監督が率いている、というデータがある。決勝トーナメントが16チームで争われるようになった1986年のメキシコ大会以降7大会のデータを見ても、ベスト16進出国で延べ112チーム中72.3%の81チームが自国人監督、27.7%31チームが外国人監督だった。自国人監督81人には、2010年大会の日本代表監督であった岡田武史氏、外国人監督31人には2002年大会のフィリップ・トルシエ氏が含まれている。日本が未だ到達していないベスト8に進出したチームでは78.6%(44人)が自国人、外国人監督は21.4%(12人)だった。ベスト4になると、また一気に外国人監督の割合が減る。28人中ほぼ9割の25人が自国人監督で、外国人監督は3人しかいなかった。1998年大会でクロアチア代表を率いたボスニア人のミロスラフ・ブラジェヴィッチ氏、2002年大会で韓国代表監督を務めたオランダ人のフース・ヒディンク氏、2006年大会でポルトガルを指導したブラジル人のルイス・フェリペ・スコラリ氏の3人だ。共通するのは、いずれの国も優勝経験がなく、その国で過去最高の成績を残した大会であったということだ。さらに、決勝戦に進出するチームはどうかというと、外国人監督はゼロ、ただの一人もいない。優勝を争うブラジル、アルゼンチン、ドイツ、スペイン、イタリアなど強国はそもそも外国人監督を迎えたことが有史以来無い。サッカー新興国が大国から外国人監督を迎えても、決勝の舞台にはたどり着けていないのが現状なのだ。
かつて、オシム氏は監督就任の際、私が日本サッカーの方向性を示すから、自分の次は日本人が監督をするべきだと公言していたが、残念ながらそうした流れを作ることはできなかった。日本のW杯アウェーでの最高成績は、2010年岡田監督の時だ。決勝トーナメント1回戦で敗退したものの、自国監督に率いられて戦った選手たちが帰国した時の顔は晴れやかだった。W杯が国の力を示すというのであれば、監督も自国人であるべきなのだろう。ワールドベースボールの日本代表監督がキューバ人だとしたら…?そんなことは考えられないだろう。
日本サッカー協会は2050年までのワールドカップ優勝を目標としているそうだ。果たしてそのときまでに世界で戦える日本人監督は生まれているだろうか。現状でも三浦和義、ラモス瑠偉、中田英寿など、候補者はいるように思うが…?日本サッカー協会は、ワールドカップの意味を“勝てば良い”と取り違えてはいないか。オールジャパンで勝つのは、まだまだはるか先だろうが、結果よりもプロセスが大切なのは言うまでもない。
| 14.08.01