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リカちゃんハウス

女の子の定番おもちゃ、タカラトミーの最新版「リカちゃんハウス おしゃべりスマートハウス ゆったりさん」(http://licca.takaratomy.co.jp/products/house/yuttari/index.html)がパナホームとのコラボで話題に。屋根の太陽電池で起こした電力を蓄電池にためて使える「スマートハウス」になっているのだが・・・。
「リカちゃんハウス」のようなドールハウスは、元々は16世紀ごろから、ヨーロッパの中流家庭を中心に女の子を対象とした教育玩具として盛んに作られるようになった。日本にもかつてひな人形を使った美しいおままごと道具があったが、ドールハウスは女の子の情操教育の一環として、母親が娘にテーブルマナーを身につけさせるのに役立てたともいわれている。また、イギリスのメアリー女王に贈られたメアリー女王のドールハウス(Queen Mary's Dolls' House/  http://46.236.36.161/queenmarysdollshouse/home.html)が 1フィートを1インチに縮小した1/12 の縮尺だったことから、ドールハウスは 1/12 サイズ(インチサイズ)が標準となっている。ドアや窓枠の仕様、壁紙の選び方、電気配線の仕方に至るまで、生活様式を保ちながら限られた空間の中にいろいろな時代の生活を詰め込んで、500年にも渡って夢の生活空間を作り上げてきている。
翻って「リカちゃんハウス」を改めて見てみると、当然のことながらひな人形の伝統は忘れられている。むしろ1968年の初代から46年間、伝統との狭間で生活様式の混迷を来す戦後日本の住宅事情の移り変わりを映し続けてきた、まさに鏡だったことに気づかされる。初代「リカちゃんハウス」は、カーテン越しの窓からアルプスの山々(?)が見えるしゃれた豪邸の一室だった。70年代はその頃普及していたプッシュホンが取り入れられた、白いレンガ造りと真っ赤な屋根がおしゃれなハイツとなり、80年代はバブル期のブームに乗ってマンション暮らしになった。洋室もほしいけど和室もほしいというニーズにも対応した2LDKと3LDKの2タイプで、和式と洋式の間で揺れる日本の生活様式を映す夢のないリアルな形状へと変化していった。その後5LDKの「億ション」が登場し、「ヒルズ族」人気にあわせて「ハートヒルズ」と銘打った商品も売り出されたが、生活様式が定まらない中広さだけが強調され、間取りが雑になり、なぜかチープ度が増すに至った変化は、悲しささえも感じさせた。
今回の新「リカちゃんハウス」の最大の売りは、発電の状態を示すモニターなのだとか。スマートフォンやタブレット端末をかざすと、本物のスマートハウスにあるモニターそっくりの画面が映し出され、家の外観のイメージや架空のお天気、その日の発電量が確認できる仕組みになっている。しかし、テレビの横に洗濯機があったりする陳腐な生活導線は相変わらず。パーツにこだわり過ぎて生活様式が見えてこないのだ。
発売以来500年、時代によってインテリアは変化しても生活様式を変えないドールハウスの様式美に裏打ちされた美しさに比べ、派手さとは裏腹に哀愁がただよう「リカちゃんハウス」。図らずも見せたのは、「生活様式は戦後日本にはない!」ことだ。
“敗戦”とは、こういうことを言うのだろうか?

| 14.07.25

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