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料理シェア
ご近所で作られた料理を安く食べられる「料理シェア」のサイト『Cookisto』(https://www.cookisto.gr/)が、今、ギリシャのアテネで注目されている。
仕事で疲れたので家に帰ってご飯を作るのは面倒だけど、外できちんとしたものを食べるのも高くつくし、どうしよう──そんな気分になることはよくある。そんな時、自宅や職場の近くで誰かが作った料理をお手軽価格で買う“料理シェアリング”がちょっとした流行りになっているというのだ。『Cookisto』は料理を食べたい人と腕を振るいたい人をマッチングしてくれるサイトだ。
食事をしたいユーザーは、このサイト上の地図で自分の現在地に近い場所で料理する人を探し食べたいものを注文する。一方、料理する時間のある人は、作る料理と価格、配達時間の目安を決めて公開し注文が入るのを待つ。せっかくシチューを煮込んだけれど一人暮らしだとなかなか減らない。3日も4日も同じものを食べたくない──というような人も参加してくる。スマートフォンの普及もあって、アテネに続いてロンドン版(https://www.cookisto.co.uk/)も開設されている。
かつて日本でも作りすぎたおかずを分け合う料理シェアが普通にできる近所付き合いがあったが、今ではコンビニがそれを代行している。高齢者や一人暮らしの家庭向けに、同じものを食べない家族向けに、適量、適価、適保存、適味が追求された個食パウチ惣菜が充実し、多くの人たちから支持されている。そうした中で、東京版『Cookisto』の上陸も検討されているようだが、これだけコンビニが発達した東京では難しいだろう。
ところで、『Cookisto』をはじめスマートフォンならではのこうしたシェアリングサイトは、様々な機能のものが続々と登場している。空き部屋マッチングのマーケットプレース『AirBnB』もその一つだが、2008年の創業以来、短期間で宿泊者が1,500万人を超える大事業になった。反面「自己責任」とユーザーのレビューだけで参加するか否かを判断する必要がある。このようなソーシャルなマーケットプレースは、サービス内容によっては各国の法律に合わないものも出てくる。因みに日本では住宅の1日からの賃貸を禁じた政府のガイドラインが存在する。限られた地域では有効なサイトが、国境を越えて拡大することによって本来の良さが規制の対象になることが多い。
『Cookisto』や『AirBnB』に代表されるスマートフォンビジネスの未来は、グローバル化の中でリージョナルな良さをいかに保つかにかかっているようだ。その中で、コンビニ(リージョナル)×スマートフォン(グローバル)は、サービス産業の最強のビジネスモデルになっていく予感がする。
| 14.06.27
デザイナーズ銭湯
女性たちが会社帰りに立ち寄る「デザイナーズ銭湯」の人気が急上昇中だ。時代遅れの施設のように感じる銭湯だが、近年、女性も行きやすく清潔でかわいい銭湯が増えている。
「デザイナーズ銭湯」とは、建築家がデザインして、外観や内装、浴室にこだわった銭湯のこと。古くからの銭湯をリニューアルしたものが多く、アーバンテイストなモダンデザインもあれば昔ながらの雰囲気を生かしたレトロ調など、様々なデザインの銭湯が登場している。
都内の銭湯は、昭和43年の2687軒をピークに平成26年には696軒まで減少している。後継者不足や燃料費の高騰などで厳しい状況が続いているが、「デザイナーズ銭湯」は江戸町民文化の本質をついて、銭湯復活をリードする気配だ。
中でも人気があるのは、中央区にあるアーバンテイストな銭湯「湊湯」(http://www.minatoyu.jp/)。黒漆喰を思わせる入口は老舗料亭のような貫禄がある。「南青山 清水湯」(http://shimizuyu.jp/)は、100年以上の歴史を誇る超老舗だが、清潔感のある白を基調とした浴場のタイルは、女湯はスペイン製、男湯はイタリア製というこだわりよう。もはや町の銭湯とは言えず、大人460円で入れるなら高くはない。
意外や銭湯が外国人に人気がある点も見逃せない。東京・浅草の「蛇骨湯」(http://www.jakotsuyu.co.jp/)は、江戸時間から続く銭湯だが、観光地・浅草に近いこともあり、1日に30人以上の外国人観光客が訪れているようだ。この銭湯はルイ・ヴィトンが出版する「シティガイド東京」に掲載されたことでも有名になった。さらに、東京・大田区では『外国人のための銭湯の入り方』(http://www.youtube.com/watch?v=fMnb56OLnek&feature=youtu.be)という動画を世界に向けて公開している。
日本の入浴文化の一端を支えてきた銭湯。かつて銭湯は極楽浄土の入口であると同時に社交場で、地域に無くてはならない存在だった。そして昨今、古代ローマ時代の浴場と、日本の風呂(銭湯)をテーマにしたタイムスリップコメディ漫画『テルマエ・ロマエ』(ヤマザキマリ著)の人気も後押しをして、特に人間関係が希薄といわれる都会において銭湯を見直す気運が高まりつつある。1日の終わりに1度湯につかることで、無意識に母胎の羊水に戻るような安心感を得る意味もあるのではないだろうか?温泉であっても銭湯であっても内風呂であっても、日本人は1日1回リセットする為に湯に浸かっているのだろう。この行為は銭湯の持つ社交性とは違う効用の一つで、外国人には特に新鮮だ。
かつて銭湯が地域社会のシンボリックな存在であったように、デザイナーズ銭湯も洗うという機能面を通り越して、日本が生み出した渡世の知恵を現代に生かすトレンディーな機能を担っていくと面白い。
| 14.06.20
圏外設定
Facebook、Twitter、LINEなどでSNSに疲れてしまっている人が多いという記事をよく目にする。時間ばかりが消費される、人間関係のトラブルが起きるなど、デジタル生活の不満は後を絶たず、上手く付き合えば自分にとってプラスになるはずなのに活用できていないという声もよく聞く。そんなデジタル社会の中で快適に過ごすためのヒントが書かれた『デジタルデトックスのすすめ 「つながり疲れ」を感じたら読む本』(米田智彦/PHP研究所)が注目されている。著者の米田智彦によると、過度な情報化社会に疲れたり飽きた人たちが「接続しないこと」にコストをかける、「圏外を買う」時代が訪れているのだという。
強制的にスマホを圏外にするポーチやケース、ハンカチ“Phonekerchief”
(http://www.uncommongoods.com/product/phonekerchief)などの“圏外グッズ”も既に商品化されている。電源を切れば?と思うが、電源を入れたり切ったりするのに時間がかかる為、考えられたのがこの商品だ。
カリフォルニア州のナバロで開催され注目されているのは、「デジタル・デトックス・キャンプ」というイベントだ。そこに集まった300人余りの参加者は3日間のあいだ、携帯電話、コンピュータ、タブレット、時計を使用することや、仕事、年齢に関して話すことを禁じられ、名前もキャンプ中だけの仮の名前を使って生活するそうだ。ネットから離れ大自然のなかで目の前のことに集中する時間を過ごしているうちに、以前の自分を取り戻していくという。
アイルランドの首都ダブリンにある「THE WESTIN DUBLIN」では、チェックインの際、スマートフォンやPCなどすべてのデジタルガジェットを預けないといけない、「Digital Detox in Dublin」という1泊175ユーロ(約24,000円)のプランが提供されている。それに含まれるのは、
ウェスティンの「ヘブンリーベッド」での快適な眠り、ベッドで朝食、部屋でゆったりマッサージ、ダブリンの散歩マップ、本物の新聞、リラックスできるホワイトティーのアロマキャンドル、ボードゲーム、お土産用の植物栽培キットなどの特典。「ガジェットをホテルの受付で預かる」という強硬手段と、ヒマな時間を解消するサービスの提供で、否応なくデジタルデトックスができるというわけだ。
考えてみれば、ほんの25年前日本がバブルに踊っている頃はレンガブロックの様な携帯電話だった。高級車のリアウインドウに2本のアンテナが立っていた時代だ。スマホにまで発展したこの25年間に個人の幸福感が上がったという統計はない。
| 14.06.13
変な人
「ICT(Information and Communication Technology)分野において破壊的な地球規模の価値創造を生み出すために、大いなる可能性がある奇想天外でアンビシャスな技術課題に挑戦する人を支援するため」として、総務省が「独創的な人向け特別枠」予算、通称「変な人」事業(http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01tsushin03_02000075.html)をスタート、6月からいよいよ対象者の公募が始まる。
総務省は、スケールの大きなイノベーションを起こせる人間は、常識にとらわれない「変な人」ではないかと見込んで、今回の募集に至ったという。同省の担当者によると、「スティーブ・ジョブズのようなアイディアとそれを実現していく技術力を持った人材を支援したい」という意図から、通称「変な人」という表現になったそうだ。
応募の中から10件ほどの研究が採択され、被採択者には上限で研究資金300万円が支給されるほか、所属機関には間接経費も別途支給される。さらにクラウドネットワーク環境の提供、海外著名講師によるサマースクール、学会イベントなども用意されるらしい。
実際対象となる企業の応募条件を見ると、以下(1)~(7)までの全ての条件を満たすこととなっている。
(1) 日本国において登記された法人であること。 (2) 本業務を遂行するために必要な組織、人員等を有していること。(3) 本業務を円滑に遂行するために必要な経営基盤を有し、かつ、資金等について十分な管理能力を有していること。(4) 国が本プログラムを推進する上で必要とする措置を、迅速かつ効率的に遂行できる体制を構築できること。(5) 本業務と各研究開発課題の間における人員、事務、情報等の分界が明確であり、中立的な立場で業務を実施できる体制を確立していること。(6) 暴力団排除対象者に該当しない者であること。(7) 暴力団排除対象者であることを知りながら契約等の相手方としないこと。
この時点で、条件を満たす「変な人」が本当にいるのだろうか?と疑問に思う人は多いだろう。どうやら総務省は、信頼に足る「しっかりした企業」の中でスティーブ・ジョブズのような「変な人」を探しているようだ。
そもそも、総務省が言う「変な人」とはどんな人なのかを考える前に、国が率先して「変な人」を探してどうなる!と思う。定義されたような人はどんな企業も欲しがる人だ。その審査より、そうした自由な発想をもった若い人材がもっともっと生まれて来るような人材育成環境を作って行くのが国の仕事ではないか。
実に「変な企画」だ!
| 14.06.06