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社会脳

「21世紀は脳の時代」という言葉を最近よく耳にする。「社会脳」という言葉がちょっとしたブームだ。
「社会脳」とは、社会性を作り出す脳の仕組みのこと。瞬間的に変化する社会や環境に応じて、自分の行動を上手く切り替える脳の仕組みが「社会脳」であり、コミュニケーションの基盤でもあると言われている。すぐれた社会脳を持つ人の比率が高い組織・企業・国家は将来が明るいと言える。
理化学研究所脳科学総合研究センターの適応知性研究チームが開発した『SR システム』(Substitutional Reality System:代替現実システム)は、人工的に社会脳を作り出す画期的実験だ。過去を現在に地続きのものとして挿入することで、体験者の経験する主観的な「現実」そのものを操作し、離れた時間と場所を共有させてくれるシステムだ。体験者が装着するヘッドマウントディスプレイ(HMD)には、目線の位置に付けたカメラからのライブ映像、およびあらかじめ同じ場所で撮影した過去映像が織り交ぜて表示される。体験者はライブ映像と過去映像の区別ができなくなり、体験者に気付かれずに「現実」をあらかじめ用意したものにさしかえることができるというわけだ。東京・外苑前のTEPIAでは誰でも無料で体験できる。スマホを使った簡易版SRシステムも開発されたそうだ。多くの人がSRシステムを楽しむようになると、気が付かないうちに社会脳が鍛えられる。
「脳」で認識できたものだけがリアリティである、という現実の中で我々は生きている。過去を差し替えることで「社会脳」をポジティブに変化させることが可能なわけだ。肉体改造ならぬ脳改造が進むと、複雑な社会への対応力が増していくことにもなる。特に政治や自然の災害予防の分野での応用が期待されるのではないだろうか。優秀な社会脳があればと期待される現場として、「韓国セウォル号の乗客救出」、「日本の集団的自衛権」、「タイの政治混乱」、「米国のテロとの戦い」、「パレスティナとイスラムゲリラ」問題など、是非もっと社会脳が発達した人々で議論してもらいたいものだ。

| 14.05.23

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