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F1魂

1970年代後半のF1グランプリを舞台にした映画「RUSH-プライドと友情」が2月7日から公開され話題になっている。1976年日本の富士スピードウェイで初めて開催されたF1レースで繰りひろげられた、ジェームス・ハント、ニキ・ラウダの劇的なチャンピオン争いと共に、2人のトップドライバーの対照的な性格とスタイル、心の葛藤などが描かれている。
登場するマシンは現存する当時のマシンを実際に使用、登場する人物もホンモノそっくりの俳優を起用するコダワリぶりに、モータースポーツファンの多くが大いに感動している。当時のF1マシンは今のF1マシンに比べて安全性が著しく低く、ドライバー達が数多く命を落としてきた。70年代のF1マシンはまさに「走る棺桶」であり、そうであっても恐怖に怯えず「No.1になりたい!」という気持ちを先行させられるドライバーとメーカーだけが、頂点まで登り詰めることができる最後の時代だったと、「RUSH」を観て確信した。
その後、80年代に入ってホンダがアジアから台頭し、コンピューターによって解析されるシステマチックなF1の時代が始まり、マシンの力が人の力を上回って勝ち続けるチームが出るような今のつまらないF1になってしまった。ホンダは1988年にマクラーレンホンダで16戦15勝を達成しているが、その後は、レギュレーションの度重なる変更で、日本勢がおいそれとは勝てない状況になっている。
しかし、レギュレーション変更を怨んではいけない。昨年ホンダは、メルセデスベンツとのエンジン契約が切れるマクラーレンへ2015年からエンジンを提供しF1へ復帰すると発表した。今回のF1のレギュレーション変更は、ホンダにとって、 “エンジンサプライヤー”ではなく、“パワーユニットサプライヤー”になることを意味している。2つの回生エネルギーシステムをそなえた1.6Lという少排気量ターボエンジンで、“少ないガソリンでどれだけ速く走れるか”という競争に参戦することが、ホンダのチャレンジ魂に火をつけたようだ。
だが、結果をすぐに期待できるだろうか。日本やアジアが見落としているのは、フロンティアには「技術」だけではなく「勇気を伴った技術」が必要だということである。F1は勇気を見せつける舞台であり、エンジンをテストする場ではない。ホンダは成し遂げたが、未だにトヨタと日本人ドライバーが勝てない理由はそこにあることを忘れないようにしろ、と「RUSH」が語っているように思えた。

| 14.02.14

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