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ロボットライフ
シャープが昨年から発売している人工知能を備えたロボット掃除機『ココロボ』が、販売1年で10万台に達し人気上々だ。
2002年から販売されている先行のiRobot社製『ルンバ』と比較されることも多いが、日本の家屋の状況を知り尽くしたシャープの掃除機づくりのノウハウで開発された安心感から評価が高まっている。また、声を出して会話をしてくれる点が、これまでの家電製品にはない楽しさも人気の要因のようだ。掃除機のポイントはしゃべるかどうかではなく、部屋をキレイにできるかどうかが重要と考えるのが常識だが、掃除機がしゃべり、WIFIにつながって、カメラ撮影する時点で、すでに掃除機というよりロボットとしての存在感が高まってきている。『ココロボ』の人工知能は「ココロエンジン」と名付けられており、シャープは今後エアコンや冷蔵庫など白物家電のほぼすべての分野で搭載商品を販売予定。ますます“言葉を話す家電”が浸透し、知らず知らずにロボットに囲まれた生活になりつつある。
一方米IT大手が、続々ロボット事業に力を入れ始めている。グーグルが家事用ロボットなど開発企業を矢継ぎ早に買収している。ちなみに買収した企業の中でも注目を集めているのが、東大OBらが設立した日本企業「Schaft(シャフト、http://schaft-inc.jp/)」だ。同社は、フロリダで開催された国防総省の国防高等研究計画局(DARPA)が主催する救援ロボット競技会で圧倒的な強さを見せ、国防総省から開発援助を受ける権利を得た。また、アマゾンは運搬ロボットに加え配送用無人機の開発に着手している。アップルは先日買収したイスラエルの企業で、ゲーム機にも使われている人の動きを感知するセンサーを手掛ける「プライムセンス社」もロボット関連企業だ。各社がインターネットに続く新たな成長分野としてロボットに熱い視線を向けていることがわかる。
現在日本メーカーは、産業用ロボットでは世界の5割超のシェアを持ち、主導権を握っている。しかし、ロボットは自分で考え自立して動くプログラミングが最も重要。米IT大手企業などは、そうしたソフトに強く、ユニークな製品を生み出す発想力で、生活者向けに新な商品を打ち出してくるだろう。このままロボット業界全体での日本シェアを維持していくことは、容易なことではなさそうだ。新なニーズを捉え商品化をする工夫が必要となり、来年は正念場の年になるだろう。
| 13.12.27
WASHOKU
『WASHOKU(Traditional Japanese Cuisine )和食』が世界文化として、ユネスコの無形文化遺産に登録されることになった。海外では既に健康的な料理として定着している『和食』がさらに人気が高まることになる。さっそく日本のイメージアップにもなると、食材の輸出増加などに期待が寄せられているが、ところで、何をもって『和食(WASHOKU)』なのだろうか?その明解な定義はなく、その判断は日本人の感覚、その食事をする人の感覚にゆだねられていると言っても過言ではないようだ。あえて狭義でとらえるならば、日本で培われた「出汁」などを利用した独特の調理法で作られた料理のことを指すのだろうか?しかし、独特の調理法というのが曖昧なため、『和食』の範囲は非常に広く考えられている。
ユネスコの無形文化遺産への登録を目指す動きはかなり前からあり、当初は会席料理を頂点とした日本料理の文化性で登録を目指していたようだ。しかし、そうした日本料理は一部の人だけのものと捉えられ、業界を保護するための取り組みと見られたりする可能性があることから、特定の日本料理に偏らない、日本の食全体にまつわる文化・習わしを推薦する方針に変えたのだそうだ。『和食』の推薦理由は、1)新鮮な食材、2)優れたバランス、3)年中行事との関わり、4)美しさ・季節の表現とのこと。これらが食文化として、自然を尊重する日本人独特の精神が表れ、世界の多様な文化のひとつにあたると評価されたらしい。
皮肉なことに、世界的に『和食』がブームになっている中で、肝心な日本では『和食』離れが進んでいる。公立小学校の給食は、ご存じのようにとても『和食』の国の食べものとは言い難い。そのせいなのか『和食』の根本である“うまみ”を理解できない日本人も増えてきているという。食のグローバル化は、日本文化の新しい理解者を増やすことであると同時に、日本自体が変化を求められていることでもある。柔道着がブルーになったように、今やカルフォルニアロールも立派な『WASHOKU』なのだ。
| 13.12.20
セルフィー
英オックスフォード大学出版局のオックスフォード辞典が、世界の英語ウェブサイトで頻繁に使われた言葉から選出する「The Word of the Year」で、今年選ばれたのは 「selfie(セルフィー)」。スマートフォンやウェブカメラで自分撮り(自撮り)をしてソーシャルメディアにアップすることを意味する。セルフィーに夢中になっている人を selfie-taker(セルフィー・テイカー)と呼び、セレブの間でも流行している。
ジャスティン・ビーバー、レディ・ガガ、マドンナなどがセルフィー・テイカーとして有名だ。過度なセルフィーは selfie obsession(セルフィー中毒)とも呼ばれているが、もともとは携帯電話やデジカメで自分を撮ることを指していた。スマホの普及に伴いブログやSNSで自分の写真を掲載する人が劇的に増え、使用頻度が過去12か月で『170倍』にも増加した為、「セルフィー」は流行語と認定されたようだ。
アメリカでソーシャルメディアを利用している10代の若者のうち、今や91%が自分の写真をサイト上で公開しているそうだ。イギリスの10代の少女の間では、インターネット上の匿名掲示板に顔写真を投稿して「私ってかわいい?」「私ってセクシー?」と、外見に対する承認を求める行為が急増している。
Facebookからの30億ドルの買収提案を袖にした、「Snapchat(http://www.snapchat.com/)」の自動消滅写真投稿サイトもセルフィーの勢いを増したと言える。Snapchatは、仲良しの知り合いに写真や動画をスマートフォン同士で配信し、視聴後(1-10秒内)に自動消滅する仕組みだ。2013年2月に毎日6千万枚の写真が交換されていたのが、5月には1.5億枚が交換され、最近は多い時で1日3億5000万枚にも上るらしい。
英語圏ではソーシャルメディアが、新しい形の「ナルシシズム(自己愛)」を呼び覚ましているが、その背景には「自己顕示」を良しとする文化がある。アジア圏にはLINEに象徴されるように、最高の意思表示は直接言わなくても伝わる「以心伝心」を良しとする文化がある。ソーシャルメディアはユーザーの微妙な心理を捉える事から真に“民族文化”のメディアとも言えそうだ。
| 13.12.13
スナックサイズラーニング
KDDI(au)が中高生向けに提供する「GAKUMO(ガクモ)http://gakumo-study.com/index.html」は、モバイルに最適化された学習プラットフォームだ。短時間に効率よく学習することを目的に開発され、1回10~15分の一問一答形式で、間違えた問題は正解するまで繰り返せる。この月額980円からの有料学習サービスは、通学時間などの隙間時間を有効に使えると人気を集めている。
「GAKUMO(ガクモ)」は、DeNAの共同創業者・渡辺雅之氏が2年前にロンドンで立ち上げた、モバイルeラーニング企業「Quipper」との協業でスタートした。渡辺氏は2010年当時、DeNAでは教育のような回収に時間のかかることはできないとして、DeNAを去った事で有名だ。そして、数年で高速ネットワークとiPhoneやAndoroidといったデバイスが発展すると判断。今年インフラが整備されたとして、教育プラットフォームのグローバル化と安価な展開をKDDIと開始したというわけだ。
Quipperの面白いところは、プラットフォーム開発に当たり、出題される問題の表示をクイズ形式で進め、ゲーム感覚で提供しているところだ。教育は国別の地域性が強い為、資格やカリキュラムなどが異なっても大丈夫な、各国共通プラットフォームが必要だ。すでに教育コンテンツとして、iPhoneやAndoroid端末用のアプリは累計400万ダウンロードを達成し、5000のコース、20万の問題、2億の回答が集まるなど海外で盛んに使われ始めているとの事だ。
これらは、学習ツールにスマートフォンを用いることから、“スナックサイズラーニング”と呼ばれ、短時間で、個人に最適化されたコンテンツを場所と時間と言語を選ばず効率的に学べる。しかも、お手軽&お気軽な暇つぶしとして成功したゲームと構造的には違わないところが面白い。ネットサービスで今最もホットな分野が「教育」であり、その市場規模は1兆円とも言われている。
DeNAやグリーがスマホゲームの世界で伸び悩むのを尻目に、"スナックサイズラーニング"がスマホゲームの市場規模を上回る日も近いというのは痛快だ。
起業家には信念が重要だということを今更ながらに教えてくれる。
| 13.12.06