マドリスト
住宅の間取りを見て楽しむ人を“マドリスト”、実際に間取りを作っちゃう人を“マドラー”と呼ぶそうで、そんな間取り図大好きな人間が増えている。
最近、実在する変な間取り図ばかりを紹介するブログやサイト、書籍までもが存在し、“間取り図オフ会”まで開催されているという。今やすっかり間取りは面白カテゴリーになっているのだ。現在13万人ものメンバーがいるmixiの「間取り図大好き!」コミュニティでは、“マドリスト”たちが集まって、間取りを楽しむ鑑賞イベントなどが開かれている。実在しうるヘンな間取り図を収集して、その生活を想像・批判したり、感動したりするのが主な活動だが、回を重ねる毎に参加人数が増えて、「間取り図大好き!」(扶桑社)として書籍化もされた。
また、「クローゼットはもう少し広い方がいい」とか、「リビング脇の部屋は壁を壊して広くしたい」など、不動産屋のチラシを手に夢想する時間は、“マドラー”達にとっては至福のひと時であると同時に苦悩の時だ。今ではWebでフリーにダウンロードできる簡単間取り図設計ソフトを使って、間取りを改造したり、自作の間取り図を作ったりもできる。しかも入力した間取り図を元に3次元描画でリアルに再現し、理想の住まいをシュミレーションできるものまであるのだ。
“マドリスト”や“マドラー”の出現の背景として、マンションの耐久性は100年近くになろうとする中で、実際の物件所有年数は平均15~20年でしかないという現実がある。今や中古物件のリフォームが主流なのだ。限られた国土で、特に都心の矮小住宅事情の中で、中古物件の間取りを工夫して少しでも広く暮らしたいという気持ちから、間取り図がもはや癒しの存在になっているようだ。一方で、やっと日本もマンション業者の建築条件のお仕着せではなく、自らの住宅ライフスタイルをユーザーから創り上げようとする時代になったとも言える。
戦前ある種の完成をみた日本住宅様式は、戦後完全に破壊されたのだが、70年を経てやっと独自のライフスタイルを取り戻しつつあるのだろう?
| 13.10.04