野心女子
林真理子の人生論「野心のすすめ」が売れているそうだ。著書の中で彼女は、野心を抱かなくなった若い人たちに、失敗と屈辱に満ちた自身の青春時代を赤裸々に明かしながら、「挑戦し続けると、運は強くなる」「“高望み”で、人生は変わる。人生は何度でもリセットできる」と説いている。
本書の中には、無理と言われ続けた願望を「高望み」し、「挑戦」し続けてきたことで叶えてきた自らの体験に基づく、夢を実現させるためのヒントも満載だ。そうした彼女の一歩一歩ほしいものを手に入れてきた姿が、20~30代の女性を中心に共感を呼び、現在20万部を超えるベストセラーとなった理由になっている様だ。さらに「夫婦共働きで、1.5人分稼げればいいよね」とか、「服はファストファッションでいいよね」、「お金を使わなくても人生は楽しいよね」…など“足るを知る”と言えば聞こえはいいが、「低め安定」の日本の風潮に警鐘を鳴らしている。
時を同じくして発売され話題になったのが、FacebookのCOOシュエル・サンドバーグ著の「LEAN IN」。2児の母でありながら、誰もが羨む社会的地位と巨万の富を得た彼女が、「男社会に物おじせず、したたかに成功をめざそう」と、働く女性に野心を抱くことをけしかけている。米国の産業界では、重要な仕事の86%を男性が担っていて、こうした仕事を女性が担えないのは、高い目標を掲げようとせず自分の能力を過小評価している女性自身にあると主張する。女性が権力を手にするにはまず自分たちの内面にあるバリアを取り払うことが大事ではと問いかけている。
“野心”と言えば腹黒かったり厚かましいイメージが先行し、野心家となったらほとんど悪人扱いだ。しかし、それでも“野心”に惹かれて両書を手にした読者たちが本当に聞きたいのは、著者の自慢話ではない。両書にも、インフレ設定を数字で示すアベノミクスにも欠けているのは、日本人が目標とする“ライフスタイルの提唱”ではないだろうか。「低め安定」で小さく縮こまった生活に、そもそも日本人の未来は無い。
| 13.08.02