卵子凍結
去年6月のNHKスペシャル「産みたいのに産めない~卵子老化の衝撃~」は、大きな反響を呼んだ。35才以上の出産が“マル高”と呼ばれ、大変になることは知られていたが、“卵子老化”によって不妊になるとはまったく知られていなかったからだ。放送から1年経った先月、首都圏スペシャルで、「“卵子老化”の衝撃 社会は変わるのか」と題して再度このテーマが取り上げられ、今“不妊社会”の現実が改めて問題になっている。
国立社会保障・人口問題研究所の調べによると、不妊の検査や治療を受けたことのある夫婦は6組に1組。日本産科婦人科学会によると、体外受精の実施数は年間24万2000件で世界最多なのだそうだ。いつの間にか日本は“不妊治療大国”になっていたのだ。一方、日本の体外受精の技術力は世界的に遜色ないのに、成功率は低い。世界各国の体外受精の成功率を比較した調査では、採卵1回あたりの出産の割合が、アメリカ38%、世界平均26%に対し、日本は18%と米国の半分以下で、先進国の中で最も低レベルなのだという。その要因として指摘されているのが “卵子老化”だ。
体外受精成功率向上の為にも、若い卵子を確保する「卵子凍結」が注目され始めている。10年以上も前に「卵子凍結」が合法化された英国では、凍結技術も進歩して、女性の5人に1人が「卵子凍結」を希望しているそうだ。出産の年齢的リミットが近づく前に卵子を凍結し、理想のパートナーと出会う日に備えたいと考える女性が増えてきている。凍結した卵子は保存が長期化しても劣化しないが、凍結の適齢期は20代前半と言われている。少子化対策担当や女性活力・子育て支援担当相を置くのであれば、政府はこの様な現実に目を向け、「卵子凍結」が女性たちに生物的生存への時間稼ぎをするチャンスを与えると考え、正面から取り組むべきだろう。産みたい女性たちにとって幸福な選択ができるよう、倫理観もさることながら、科学技術を率先して取り込んでいく社会へと変えていく必要があるのではないだろうか?
| 13.07.12