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偽ありがとう

「これ、10部コピーをとっておいて」(上司)
「はい、ありがとうございます」(部下)
日本語の使われ方を調査・研究しているNHK放送文化研究所によると、本来は感謝の気持ちを表す「ありがとうございます」という言葉が、上記のようにこれまでとは違った使われ方をされることが多くなっているという。もともと「ありがとうございます」は、自分の希望がかなうというなかなかない「有り難い」ことをかなえてくれた人に、感謝の気持ちを表す言葉だ。ところが最近、普通では考えにくい場面で、違和感のある「ありがとうございます」が若い世代の間で目立ち始めている。
同研究所が343人から回答を得たネットでのアンケート調査によると、こうしたやりとりを「聞いたことがある」と答えた人は、すべての世代の平均で18%、20代では37%の人が「聞いたことがある」と答えた。調査した専任研究員は、本来なら「かしこまりました」「承知いたしました」と言うべきところを硬すぎると考えたり、「了解しました」ではやや冷たい印象を与えかねないという発想から、「ありがとうございます」が選ばれているのではないかと分析している。これはいわば「ありがとうの了解用法」とも言える新たな使われ方なのだそうだ。また、チェーン系の居酒屋などで注文を受けたときの「ありがとうございます!」「喜んで!」といった返事に耳が慣れてしまっていることも影響しているようだ。
社会の変化に応じて言葉が変わっていくのは当然だが、本来感謝を伝えるべき「ありがとう」を了解の意味でも使うことは、さまざまな価値観と折り合いをつける為に「ありがとう」が必要になっていると理解すべきだろう。 「“偽”ありがとう」は、気持ちのこもらない「ありがとう」として、理不尽なことの多い世の中を乗り越える為の処世語として進化してきている。この様な処世術を若い世代に必要とさせている社会は健全とは言えない。

| 13.03.08

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