縦読み文化
初版刊行から17 年となる大型国語辞典『大辞泉第2版』が、本格的な国語辞典としては本邦初の“横組みレイアウト”として、先日出版され注目されている。確かに『大辞泉』は早くからデジタル化に対応し、電子辞書やポータルサイトの辞書としても活用されてきたが、その基となっている大型辞典自体を横組みにするという、かなり意表をついた展開だ。
すでに日本語の横組み・横書きの本は相次いで出版されている。ケータイで無料配布されるケータイ小説の書籍版はもちろんのこと、ゴマブックスの「横書きで名作を読む」ヨコガキ名作文学シリーズは、携帯のメールなどで横書き文化に慣れている若いケータイ世代に向けに、名作を「読みやすい」横書きで提供するというものだ。
その一方で、日常生活は横書きでも、書籍は縦書きで読みたいという思いは根強くある。株式会社インプレスR&Dが行った書籍の縦書き・横書きに関する意識調査によると、出版社の電子書籍に対する縦書き表示の取り組みについて、半数以上が「支持する」と答え、「日常生活では横書き中心になっているが、書籍の縦書きは文化として守ってもらいたい」という声も多かったという。
そうした中、世界的に主要な電子書籍フォーマットのひとつであるEPUB3が縦書きレイアウトを採用するなど、縦書きレイアウトの国際標準化も進んでいる。EPUB3はソニーの電子書籍端末「リーダー」や楽天の「コボタッチ」など、国内外の多くのハードがサポート。10月末にオープンしたAmazonの『Kindleストア』から無料ダウンロードできる『Kindle』アプリも、縦書き・ルビ打ちなどの日本語表示に対応しており、ソフトも充実してきている。
さらに、インターネットのブラウザーに「縦書きレイアウト」を国際標準として普及させる動きも活発化している。現代中国語において中国は既に縦書きを廃止している。今や世界の現代文字において縦書きを採用しているのは、日本と台湾だけだ。その貴重な縦書き文化を海外のソフトが守ろうとしている中、日本を代表する“国語”辞典が横書きを売り物にするとは、日本の出版界は変ではないか?
| 12.12.14