添景
鉄道模型を盆栽風の小さなジオラマにして作る「盆ラマ」が話題だ。このような建造物や周辺環境・背景を立体的に表現する情景模型や、建築模型に添えられている人物や家具、外構など組み立てる小さな紙人形が、手軽な趣味としてミニチュア的景色を作れると人気を集めている。中でも「TERADA MOKEI」が販売している「建築模型用添景シリーズ」は、本業の建築模型を離れ、一般の人が身の回りのインテリア小物として作ったり、手紙に添えるなどして楽しんでいる。
「添景」とは、建築物が実際に建てられる前、実際の100分の1程度の大きさで検討用としてつくられる建築模型に入れる為の人物やアクセサリーのこと。模型作りは建築事務所の新人が任される仕事で、たいていは徹夜作業になる為、添景を作るまで余力が残っていないことが多い。しかし、添景は模型の完成度やセンスが問われる重要なアイテム。そうした建築事務所スタッフ用に汎用の添景を作ったのが、建築士の寺田尚樹氏だった。その後、「TERADA MOKEI」は一般向けにも販売されるようになったのだ。「添景セット」は、ハガキサイズの1枚の紙に、基本編のほか、動物園や花見、屋台など、微細で驚くべき世界が詰め込まれている。思わず組み立てたくなるような楽しい形をしたパーツやそのレイアウトには、寺田氏ならではの観察と物語が込められている。「TERADA MOKEI」のホームページには、そうした「添景セット」の購入者が自由に発想を加えてストーリーづく
りを楽しんでいる写真が紹介されている。また、未開封のまま出さずに飾って眺めている人もいるそうだ。
一方、好評のうちに9月末で終了した、NHK朝の連続テレビ小説「梅ちゃん先生」のタイトルバックに使われた、ジオラマ作家山本高樹氏の作品も、懐かしい街並みや庶民の暮らしがいきいきと再現されていると、放送中から注目されていた。山本氏のジオラマには、単なるノスタルジーでは片づけられない、現代人の羨望や心の焦りをかき立てるものがあって人気だった。
人が居て、人が暮らしている様子が表現されているジオラマには、心理療法の箱庭のように、現代人には欠かせない心や情操を癒すアートとなる要素があるようだ。
| 12.11.09