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2.5世帯同居

2世帯同居ならよく聞く話だが、これからは「2.5世帯同居」が増えてくるという。2010年の国勢調査によると、60代が世帯主の家族では、これまで最多だった夫婦だけの世帯より単身の成人の子と一緒に暮らす1.5世帯が増え、約300万軒にも上った。この傾向は都市部に多い現象で、東京都だけ見ると、「親と単身の子」の1.5世帯が常に「夫婦のみ」を上回っている。婚姻率が減少傾向にある一方で離婚率は増加傾向にあり、婚姻件数に対する離婚件数の割合が年々上昇し、離婚して実家に戻ることが珍しくなくなってきていることも関係ありそうだ。親と単身の子が居るところに別の子ども世帯が加わったり、親がすでに2世帯のところに単身の成人の子が住むなど、家族の在り方も多様化し、その結果、“2.5世帯”という新たな同居形態が生まれている。
親世帯と同居するシングルと言えば、「パラサイトシングル」という言葉で表現された時もあった。しかし実際には経済的に親に依存している人ばかりではなく、親世帯と生活を重ねつつも自立できる収入を持っているケースも多い。完全に独立して暮らしているわけではないが、子供の頃の親子関係とは違い、家族と一緒に住み家族の一員としての役割も果たしつつも自由な生活をしたいと考えている。親世帯から半分独立できている存在と捉え、結婚していなくても1世帯だという発想が求められるのかもしれない。実際「2.5世帯同居」は、2世帯にワーキングシングルからの資金が加わることで、経済的メリットが高いという考え方も強い。晩婚化・非婚化が進んだ今、子供が単身者としてずっと住み続けられるように、各世帯それぞれの居住空間が独立した家づくりも求められているようだ。
世界の多くの国々では、今でも大家族が一般的な居住形態で、かつて日本も祖父母、父母、子ども夫婦に、孫世代の4世代が同居することが珍しくなかった。経済発展と共に核家族化が進んだものの、子育てなど多くの問題をかかえ、核家族を前提に社会共同体を作り出せるところまで日本の家族形態は成熟化していない。「2.5世帯同居」は、良い意味での大家族制とは異なる、社会の不安を映し出した日本の滅びの家族形態の行き着いた形なのだろうか?

| 12.11.30

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