復活バンド
デビュー40周年を記念して、5年ぶりに全国ツアーをスタートさせた「TULIP(チューリップ)」が先週末、東京国際フォーラムホールでの2DAYS公演を開催し、「心の旅」「虹とスニーカーの頃」等をはじめとする大ヒット曲や名曲の数々をアンコール含め計28曲熱唱した。この現象をどう捉えたらいいのだろうか?イベントとしては成功だが、すでに新曲がない限りアーティストとは言えないからだ。
ここ数年の音楽シーンは、まさに“再結成” ブームだった。海外ではレッド・ツェッペリンやMR.BIG、国内でもX‐JAPAN、SPEEDなど再スタートを発表するバンド、グループが続々と登場した。また、去年から今年にかけてのバンドの復活は、あきらかに震災がきっかけとなっており、解散後ソロで活動していたメンバーが、ソロで募金を集めるよりバンドの方が集まる額が大きいという理由からだった。復興・復旧支援の為に、歌ものロックのジャンルを作った「BOOWY~COMPLEX」、パンクロックバンド「Hi-STANDARD(ハイ・スタンダード)」に続き、再結成を期待する声が最も高かった「プリンセスプリンセス」も1年間限定で復活した。
そうしたレコード会社の要請で復活するバンドが続く中、2009年に再結成したロック・バンド「ユニコーン」は少し違っていた。80年代後半から90年代前半におけるバンドブームを牽引し、シングル「大迷惑」、「働く男」など数々のヒット曲を発表し、1993年の解散から16年という長い時間を経て戻ってきた彼らに、「復活バンドとしてではなく、新しい伝説を作って欲しい」との声も多かった。以前の活動をリアルタイムで観ていない若年層からも支持を受けたということは、現代に生きるアーティストとして評価されたことを実証している。
反面、今回の同窓会的な「TULIP(チューリップ)」のツアーは、音楽ファンの高年齢化が指摘されるとおり、コンサート会場には中年世代の姿が目に付く。懐かしさから往年の曲をライブで聴きたいと思うファンの気持ちは理解できるものの、今の復活バンドブームは、音楽シーンに何かを生むということはない。復活=過去の曲を歌っているだけなら、レコード会社の商業目的の単なる余興でしかないからだ。
表現活動を時代と対峙して行おうとする「アーティスト」と、商業主義にのった「タレント」を区別してこそ、真の復活バンドを見つけることになるのではないだろうか?
| 12.10.12