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もどき力
7月1日から牛の生レバーの販売が禁止され、焼き肉店などから「レバ刺し」が消えた。代わって人気が出始めたのが、こんにゃくを使った「レバ刺し」。香川県の食品加工会社「ハイスキー食品工業」が開発した「マンナンレバー」と呼ばれる商品だ。当初は業務用に製造されており、昨年9月の出荷量が約2000パックだったのに対して、今年5月は約8万パックになり、1年足らずで40倍の実績を上げた。居酒屋で食べた消費者からの要請で通販も開始。評判が評判を呼び、7月10日からは一般家庭でも楽しめるよう市販用パックが発売されている。従来の生レバーファンのみならず、一般消費者をも取り込む勢いになりそうだ。
鰻でも同様なことが起き始めている。3年連続で稚魚のシラスウナギが不漁となり、鰻の価格が高騰。今年は国産だけでなく、中国や台湾産の価格も急上昇し、7月27日の「土用の丑の日」を前に、代用品として「うなぎもどき」に注目が集まり始めている。中でも、料理レシピサイト「クックパット」では、見た目や食感を鰻の蒲焼に似せた「なんちゃってうなぎ」レシピの検索数が7月に入り急増しているらしい。
古来仏教では僧は戒律五戒で殺生を禁じられており、特に大乗仏教は肉食も禁止していたため、中国、朝鮮、日本の仏教文化圏では、精進料理、菜食料理が発達した。中でも肉や魚に見せかける、「雁もどき(がんもどき)」に代表される「もどき料理」が発達した。湯葉を加工して肉を作ったり、こんにゃくでイカやエビを形取ったり、シイタケや他のきのこを用いてアワビに似せるなど、植物性原料を用いて動物性の料理に似せたものを作るというところは、今回の「マンナンレバー」や「なんちゃってうなぎ」に通じるものがある。
日本の技術と文化の発展の中では、「もどきが本物を凌ぐ」という事が度々起こっている。負荷がかかればかかる程すごい物を創り出す力は、日本をあるいは世界を、現在の経済の停滞から救う力になるか?
| 12.07.27
原発の春?
福島第一原発事故以降、20年前のRC サクセション忌野清志郎の「サマータイムブルース」が今の時代を予言するかのような内容で話題となった。 『暑い夏がそこまで来てる、みんなが海へくり出していく、人気のない所で泳いだら、原子力発電所が建っていた、さっぱりわかんねえ、何のため? 狭い日本のサマータイム・ブルース』、『東海地震もそこまで来てる、だけどもまだまだ増えていく、原子力発電所が建っていく、さっぱりわかんねえ、誰のため?』、『電力は余ってる、要らねえ、もう要らねえ』と続く歌詞は、清志郎のオリジナルだ。この曲が収録されたアルバム「COVERS」は、Amazon.co.jpのニュー・ミュージック部門5位、J-POPのロック部門9位を記録し、YouTubeでも動画が増加し視聴数も大幅に増え、ネット上で一大現象となった。
原子力発電所に反対する人々の行動は、デモという形にも表れ始めている。先日の6月29日には、大飯原発再稼動に反対するデモ参加者で首相官邸前は埋め尽くされた。警視庁によると1万7000人、主催者側は途中での出入りを含め約20万人(?)と発表した。翌週の7月6日は、警視庁によると参加者は約2万1000人にのぼり、官邸前には約800メートルの列ができた。今年3月から始まった一連の原発反対デモ、第1回デモの時は300人規模に過ぎなかったが、3ヶ月で急激にその数を伸ばしている。TwitterやFaceBookの口コミを通じて急増し、ネットで生中継を見て、参加しやすそうと足を運ぶ人も多かったようだ。特に今回のデモ参加者は、子供の健康や命がかかっているということで、女性や家族連れの姿も目立った。「国民は政治に無関心」といわれる日本において、昨年のチュニジアに端を発した民主化運動“アラブの春”を彷彿させる事態との報道もあった。ちょっと大袈裟か?
「民主主義は代表制(議会)だけでは機能しない。デモのような直接行動がないと、死んでしまう」と哲学者・久野収が言っていたが、今回の原発反対デモをデモと呼べるのか?TVや新聞報道等は悪乗りし過ぎではないか?日本社会の問題点は、最も敏感であるべき大学生が無反応な事ではないだろうか?もはや日本では行動する学生はいなくなってしまったのか?大学生を巻き込めないデモは一部の利害関係者のパフォーマンスと言っては言い過ぎか。原発、消費税、普天間オスプレイ配備に、東大、慶応、早稲田や日大のキャンパスはなぜ反応できないのだろう?尖閣も北方領土も今が旬なのに??
| 12.07.20
越境作家
ユダヤ系アメリカ人のリービ英雄氏の「大陸へ――アメリカと中国の現在を日本語で書く」が、日本語を母語としない外国人の書く鮮烈なる文学的ノンフィクションとして、今注目されている。最近、日本語を母語としない外国人が日本語で書く詩や小説など文芸作品が増えてきている。世界で200万人が日本語を習い、国内で150万人の外国人が日常的に日本語に接している中での外国人の文壇参入は、日本語の国際化がチョッとだけ進んだ証しとも言える。
リービ英雄氏は、おそらく日本語を母語としない外国人作家の本格第1号で、1992年に小説「星条旗の聞こえない部屋」(講談社)で野間文芸新人賞を受賞してデビューした。当時、英語を母語とするアメリカ人が史上はじめて日本語で小説を書き、日本の文芸雑誌に発表した画期的な出来事であった。1996年には「天安門」(講談社)が芥川賞候補にもなった。そして、彼に続いたのが、スイス人のデビット・ゾペテ氏。1996年に「いちげんさん」(集英社)ですばる文学賞を受賞し、やはり芥川賞候補にもなったことで話題になった。「いちげんさん」は、京都を舞台に外国人留学生と盲目の日本人女性が恋をするという”純日本文学“で、この作家は静かで清潔感のある美しい日本語を書く。さらに、中国ハルビン市出身、中国籍の楊逸氏は、2008年、天安門事件を題材にした「時が滲む朝」で第139回芥川賞を受賞。中国籍の作家として、また日本語以外の言語を母語とする作家として史上初めての受賞となった。作中で尾崎豊の歌「I LOVE YOU」を中国人の愛国心と結びつけて描いているあたりは、かなり印象的で興味深いものがあった。
かつてリービ英雄氏は、「僕が今までに書いた本の中で、日本語は日本人として生まれた者たちの独占所有物であるという常識に抵抗していないページは、1つもないと思う」と書いていた。言語や文化や人種や国籍が “イコール日本”でつながる大多数の日本人には、そうした単一イデオロギーが彼らによって壊されるといった意識があるのかもしれない。その反面、外国人の日本語作品は、天皇制も含め、無理な神話などで特別な「日本」として一元化してしまおうという社会の縛りから日本人を自由にしてくれるところがある。
「日本人=均質な単一民族」という前提を取り払うことが必要だ。
| 12.07.13
自分サマータイム
早起きは三文の徳(得)とばかりに、早朝割引を始める店がこの夏増えている。朝4時過ぎにはもう明るい東京。北海道に至っては3時半には夜明けで、出勤前にハーフ回るゴルファーも多い。日本はなぜサマータイムを導入しないのか?と言われて久しい。それにシビレを切らしたのか、高齢化で早起きの人が増えた?からなのか、6月1日からイオングループの総合スーパー「イオン」と食品スーパー「マックスバリュー」など、全国1150店舗で開店時間をいっせいに2時間早め、朝7時の開店に。それに合わせて『朝トク7時』のキャンペーンを行っている。ボウリング中心の複合アミューズメント施設を全国展開する「ラウンドワン」では、土日祝早朝割を実施している。朝5時から8時の利用でボウリング5ゲーム、通常投げ放題パックで1,880円が1,100円になる。合わせてカラオケは13時までのフリ―タイムが600円と、早朝からボウリングとカラオケのはしごで楽しめるようになっている。また、TOHOシネマズでも、平日午前中の上映開始分は大人通常1800円が1300円になる劇場もあるようだ。今後、増税や電気料金の値上げなど、家計の逼迫が予想される中、明るいのに寝ていられるかとばかりに、夏場は“自分サマータイム”を導入する人が増えてきそうだ。
ここ数年、政財界を中心にたびたび日本でも「サマータイムの導入」が話題に上り、その都度立ち消えになっている。サマータイム導入国では、様々なシステムを組む場合に、あらかじめ生じる時間のズレを調整するプログラムが組み込まれているが、そのような設定がなされていない日本では、時刻設定などで生じる膨大なコストやリスクなどを不安視して導入されてこなかった。しかし、不況からの脱出の為にも、何でもやってみる姿勢は必要だろう。バランスシート不況下の日本では、政府が企業に代わって財政出動をした上で、マネーサプライを増やす必要があるからだ。電力消費が下がるとか上がるとか、いろいろな調査結果もあって、政府は踏み切れない様だが、いかにも変化する事が苦手な日本を象徴する話だ。
農耕民族をうたうのなら、『日昇とともに起き、日没と共に床に入る』という基本にもどるだけだと思うのだが・・・?それにしても明るい朝に寝ているのはもったいない!
| 12.07.06