IT断食
「1週間メールが無くても不利益を被ることなどない」と言い切るのは、『「IT断食」のすすめ』(日本経済新聞出版社)の著者で、ドリーム・アーツの社長・山本孝昭氏だ。彼は、便利なはずのパソコンやスマートフォンなどによる「IT漬け」が会社をダメにすると提唱し、その解決策として「IT断食」を提唱し注目を集めている。一方、近年急速に広まったFacebookやTwitterなどのソーシャル・ネットワーキング・サービスについても、使い過ぎは身体に悪影響を及ぼすと指摘する意見もある。
地域密着支援サービス団体「Relationships Australia(リレーションシップオーストラリア)」が2011年に実施した孤独感調査によると、コミュニケーションツールとしてテクノロジーを頻繁に利用している人ほど、より強い孤独感を持っていることが明らかになったのだ。18歳以上の男女1,024人を対象に行われた同調査で、「常に孤独を感じている」と答えた人が最も多かったのは25歳から34歳までの層で全体の27%。次に多かったのは18歳から24歳までの層で19%。一方、当初最も多いと予測された70歳以上の層は11%に留まった。
また、Facebookをあまり使わないと答えた人(39%)や全く使わないと答えた人(28%)より、家族や恋人、友人や知人と連絡を取るためにFacebookを頻繁に活用すると答えた人(54%)の方が、より孤独を感じていることも判明している。また、うつ病とネット依存の関係性について長年研究を続けている、英国リーズ大学の実験心理学者カトリーナ・モリソン氏も、コミュニケーションツールの長時間利用は、対面コミュニケーションの機会を失い、それによっていっそう孤独感を高め、身体に悪影響を及ぼすと指摘している。
移動中もスマートフォンで情報の受発信が可能になり、いつでもどこでもインターネットに接続でき、ITは世の中を便利にしたといえる。しかしその陰で、自覚症状もなく過度にITへ依存してしまうという「IT中毒」な人々が増えているのは確かだ。だからこそ「IT断食」をする力があるかは、個人としての決断力を測るバロメーターとも言えるかもしれない。
| 12.03.09