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高級牛乳市場

中国では高級牛乳市場が拡大しているそうだ。2008年中国産牛乳のメラミン混入事件以来、未だに中国の消費者、特に都市部においては牛乳の安全性に疑心暗鬼になり、富裕層はネットで海外から牛乳を取り寄せたり、国産であっても自社牧場で厳しく品質管理した高級品を買い求めていると言う。しかし、こうした中国の高級牛乳市場を作りだしたのは、日本のアサヒビールだったようだ。
アサヒビールは伊藤忠商事、住友化学と共同で、2006年から山東省で農業法人の経営を始め、オーストラリアとニュージーランドの乳牛650頭をITにより個体管理、日本の品質管理技術を導入し、日本と同等レベルの成分無調整牛乳を実現させた。事件が発覚した同年には、「唯品(ウェイピン)純牛乳」ブランドとして、北京や上海、青島市などの高級百貨店やスーパー等で販売を開始。日本の技術を導入したプレミアム牛乳から、中国の富裕層向けに高級牛乳の市場開拓がはじまったのだ。値段は、1リットル入りの紙パックで23元 (300円、1元は約13円)、中国製の一般的な牛乳が1リットル10元前後で売られているのと比べると約2倍の値段。日本では “ごく普通の”牛乳が高級品として販売されているというわけだ。
またアサヒビールの農場では、露地栽培、温室栽培、酪農とそれぞれが相互に作用しあう循環型農法を取り入れているので、牛乳以外に生のまま食べられるジューシーなスイートコーンや、粒が大きくて甘いイチゴなども栽培されている。牛乳と並んで、ここで手間暇かけて作られた農作物も、市場価格の2~3倍と高めの価格設定ながら、富裕層を中心に売り上げは堅調に推移しているそうだ。
中国では、日本のメーカーが製造に関わっているというだけで、相当なブランド力につながっている。日本でごく普通の“品質管理”が、中国では高級市場を作り上げていることを知ると、日本の農業は、その製品の品質の高さに自信を持って世界に出て“自立した産業”となる時が来ているのだと思う。日本の農業と農民は、政治家や役人の言いなりになるのではなく、TPP交渉も恐れずに戦ってほしいものだ。

| 12.02.10

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