trendseye

寅カジ

自分より相手の立場で物を考え、人情味にあふれる自由人・・・昭和から平成の日本人を元気づけてきた映画「男はつらいよ」の主人公「寅さん」が、30代を中心とする女性に注目されている。
WOWOWのハイビジョンでは、28年間で作り続けられた「男はつらいよ」シリーズ48作+特別編の全49作品を、12月24日から1月にかけて一挙に放送している。それにさきがけ、人気モデルの富永愛がMCを務め、『男はつらいよ』の魅力を、女性の関心が高い「恋愛」を中心に「ファッション」「一人旅」の3つの視点から、精神科医の名越康文氏と共に繰り広げるトークセッションが、一般女性48名が招待されて開催された。これまで中高年男性にとってあこがれの存在であり続けていると思われていたが、ムリをしない寅さんの生き方は社会的責任が増した若い女性にも学ぶべきところがたくさんあるそうだ。
まず最初に寅さん人気に着目したのは、30代女性をターゲットとする「Domani」(2011年9月号)だった。「いつも心に、寅さんを!」と、表紙を飾るモデルの知花くららが、寅さん愛用のジャケットに似せたファッションに身を包んでキメポースをとり、寅さん風ファッションを“寅カジ”として大きく取り上げたのだ。仕事もファッションも『頑張らなきゃ』と前のめりになっているこの世代に向けて、「ゆるくて楽で、でも優しくて生き方もかっこいい」というアイコンとして、寅さんを提案することが雑誌側の狙いだった。女の現役感で取り上げるテーマとしては、かなり意表をつくものだと思う。
また、朝7時半、出勤前の会社員らを対象にした「丸の内朝大学」では、『いつも心に寅さんを!クラス』と題する連続特別クラスが開かれ、受講生の多くは30代の女性だった。キネマ旬報社が出版した「人生に、寅さんを。~『男はつらいよ』名言集~」の売上も好調で、シリーズ2冊を購入した女性の約2割が20代だったりと、しばらく寅さんのことが気になる女性たちの、こうした傾向は続きそうだ。
晩婚化と非婚化で『女性は夫に守られる』という前提が崩れ、同時に非正規雇用も進み、所属先のない未婚女性が増えている。そうした不安定な状況下でも、自分の足で自分を生きたいと思っている女性たちにとって、寅さんが家族や子どもや仕事がどうであれ、『今、幸せかい』と聞いてくれるような雰囲気は、肩の力を抜くように、心にグッとくるものがあるのかもしれない。怖がらないで、“寅カジ”で行こう!

| 12.01.27

CATEGORY

  • BOOM
  • FOOD&RESTAURANT
  • LIVING&INTERIOR
  • SCIENCE&TECH
  • TRAVEL
  • TREND SPACE
ART BOX CORP.