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裸婚

「俺には車も金も家もない。結婚指輪も買ってあげられないけれど、それでもいいかい?」
これは中国で今年放映されて人気を博したテレビドラマ『裸婚時代』で、主人公劉易陽が恋人の公童佳倩にプロポーズ゙した時のセリフだ。近年の不動産高騰により、賃金上昇率が不動産価格上昇率に及ばない中国。男性が家を用意する伝統が揺らぎはじめ、中国の婚姻の形態が変容しつつある。
多くの視聴者がこのドラマに共鳴したのは、ドラマが描いているのが大都市の普通の中産階級であり、主人公のカップルが今都市で一生懸命に働いている大多数の若者と同様に、「愛」を選ぶのか?それとも「物」を選ぶのか?という、困難な境地に追い込まれていたからだ。「裸婚」は純愛を追い求める者だけが実現できる一種の“憧れ”となって、「私を愛しているなら、私と『裸婚』して」という言葉が、若者の間で流行したのだという。
急速な経済発展に伴い、最近の中国の結婚条件は、マイホーム、マイカー、一定額の貯金が前提と、要求もかなり高くなっていた。しかし、中国の初代一人っ子たち=1980年代生まれの世代の結婚の現実は、欧米の金融危機に端を発する不況に続き、就職難や結婚難の要素も加わって、かなり厳しい状況になっている。マイホームの取得どころか、披露宴すらひらけないまま「裸婚」を受け入れる若者が増えているのだ。
物欲に溢れ価値観を見失いつつあったこのところの中国社会において、「裸婚」はひとつの勇気なのだろうか。幸せになれるかどうかは、結婚の形式によるものではなく、結婚した二人が家族の責任を共に担い、お互いに支えながら、自分なりの結婚生活を楽しめるかどうかだ。至極当たり前の価値観に、中国は舵を切り始めたと言えるのかもしれない。
急速な経済発展によってもたらされた社会構造の変化は、中国人の生活の形態や価値観に確実に影響を及ぼしつつあるようだ。奇しくも広州での住宅価格の大幅な下落が伝えられる中、中国の消費文化は少しずつ成熟化?していく。

| 11.12.09

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