哲学教育
数年前から、喫茶店などに集まって、哲学的なテーマで意見を交わす「哲学カフェ」が広がっている。何事にも効率が優先される現代社会で、人の意見に耳を傾けながら、
じっくりと思索する時間が有意義に感じられているようだ。東北の被災地でも、「哲学カフェ」で「東日本大震災」をテーマにした議論が始まっており、体験や意見を語り、対話を深め、未曽有の震災と向き合おうとしている。
日本では、哲学は実用性に乏しい学問と見なされ、多くの大学の教養課程の履修科目からも姿を消しつつあった。しかし、フランスの大学入学資格試験BAC(Baccalauréat)の最初の科目にもなっているように、欧米では、思考力や論理性を徹底的に鍛える哲学教育の推進が大きな潮流となっている。「人は何の為に生きるのか?」「幸せとは何か?」といった思春期の子供たちが抱く素朴な問いは、古今東西の哲学思想との出会いにつながる。また、新しい生命倫理の問題など、現代の複雑な課題に向き合う上でも、文明の発達において哲学的思索は欠かせないとされている。ユネスコでも哲学教育の推進に取り組んでおり、高校生を対象とした哲学教育は、欧米を中心に多くの国で導入されつつあるようだ。
今回の原発事故では、科学だけでは解決し尽くせない問題を考える上で哲学的思考が必要であり、さらに未来の構想を語る上でも哲学の言葉が必要であると言われ始めている。「思考するための基本的で的確な方法を学ぶ」という哲学の手法を、自由に思考するための“武器”として、早期に教えていくことが大切ではないだろうか?特に将来政治家になる可能性を持つ若者の為には・・・。
| 11.07.04