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新しいアメリカ人

1980年代まで世界を支配したアメリカ製造業の時価総額は、今やほとんど見る影もない。21世紀の時価総額リストの上位を占めるのは、1980年代には存在しなかった「GAFAM+TN」と呼ばれる新しいIT企業群で、シリコンバレー発のIT産業革命を先導してきたのは高度な教育を受けた「新しいアメリカ人」と呼ばれる移民達だ。
既成概念に囚われず変化を恐れない「新しいアメリカ人」による代表的企業がTESLAであり半導体大手のNVIDIAである。そしてこれらの企業群の人材とノウハウを使って今や地に落ちてしまった中西部ラストベルトを蘇らせようというのがトランプの壮大な戦略であり、彼が大統領選挙に大勝した理由だろう。
ラストベルト再生への期待が、アメリカをしてトランプを次期大統領に選ばしめたとも言える。今回の大統領選挙は、一言で言えば中西部のマジョリティがシリコンバレーの「異質なもの、従来はなかったものを認めるか否か?」であった。
それに比べて同時期に行われた日本の総選挙は、政治資金問題と手取り収入を上げることだけを争点にしたスケールの小さな選挙だった。衰退する産業を根本から立て直すことに与野党とも最後まで触れることはなかった。
アメリカは1980年代の日本、そしてその後の中国の台頭で大きく変貌せざるを得ず、生き延びるために新しいIT産業に集中投資した。その結果産業界の中心は中西部から西海岸シリコンバレーに移り、それまでの中核産業であった鉄鋼・自動車などの製造業で働く人々は、非効率な産業構造やインフラと共に取り残された。トランプはそこにマジョリティの不満を見て、旧産業の規制緩和と効率化を「新しいアメリカ人」に託すことにしたのだ。産業構造の転換を電光石火のごとくやってのける凄さがトランプにはある。「MAGA(Make America Great Again)」とは「ラストベルトを最先端の製造業地帯に!」という合言葉だ。
極端な輸入関税や中国向け半導体の輸出規制は、単なる時間稼ぎに過ぎないだろう。イーロン・マスク達に与える時間を作り出すためだ。ラストベルトがピカピカになったら関税は直ぐに撤廃し、中国と日本を攻め立てて来るだろう。バイオ、航空宇宙、AI、量子コンピュータ、ブロックチェーン、クリーンエネルギーなど立て続けに解放してくると見たほうがいい。
時価総額最低の株にはアップサイドしかない!「新しいアメリカ人」はイーロンが「DOGE (Department of Government Efficiency)」の長官になる前に、密かにGAFAM+TN株を売ってラストベルト株を買ってくるに違いない。

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